TIMP2の減少でミクログリアに変化
若い時期に多いタンパク質として知られるTIMP2を高齢マウスに補充すると、脳の免疫細胞ミクログリアが細胞の残骸を取り除く能力が高まり、炎症に関連する分子の兆候も減りました。この結果は、加齢に伴う脳の変化を調べるうえで、血液中の因子が脳内の免疫機能に関わる可能性を示しています。
ミクログリアは脳内の不要物を除去し、神経細胞のつながりを保ち、組織が傷ついた際に応答する細胞です。加齢によってその働きが弱まり、炎症を促す状態へ移ることがあります。
TIMP2がないマウスでは、ミクログリアの活性化の指標が変化し、残骸を除去する能力が低下しました。細胞の老化やストレスに結び付く分子の特徴も現れ、脳細胞の周囲では炎症やストレスに関連するタンパク質が増えていました。
高齢マウスへの補充で残骸除去が改善
研究では、TIMP2を全身で欠くマウスに加え、ミクログリアまたは神経細胞で個別に欠くマウスも調べました。細胞核ごとの遺伝子活動を調べる解析や脳組織の画像化、機能試験などを使い、TIMP2の有無による変化を比較しました。
次に、高齢マウスへTIMP2を注射し、タンパク質を血流に乗せました。その後、ミクログリアの残骸除去能力が高まり、炎症状態に関連する分子指標が低下しました。
効果が確認されたのはマウスのミクログリアで、人への効果や治療への応用は今後の研究課題です。
神経細胞や細胞外マトリックスとの関係
TIMP2は、細胞外マトリックス(細胞の周囲を支える分子のネットワーク)を調節するタンパク質でもあります。MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)は細胞外マトリックスを分解する酵素で、TIMP2はMMPの活性化と阻害の両方に関わります。
別のマウス研究では、海馬の神経細胞がTIMP2を多く発現し、TIMP2を失うとシナプス周辺に細胞外マトリックスが蓄積しました。海馬は記憶に関わる脳領域で、TIMP2の欠損は新しい神経細胞の移動や樹状突起スパインの数にも影響し、海馬に依存する記憶課題の成績低下と関連しました。
また、高齢マウスにTIMP2を1カ月投与した別の研究では、迷路を使った記憶課題の成績と海馬の興奮性シナプス密度が改善しました。血中での持続時間を延ばす融合タンパク質も検討され、血液脳関門を通過する性質が確認されました。この研究では、認知機能や神経細胞への効果にMMP阻害は必須ではないことも示されており、TIMP2の作用はMMP調節だけでは説明できません。
若い血液をめぐるマウス研究
2014年の研究では、若いマウスと高齢マウスの血液循環をつないだ場合、高齢マウスの海馬で樹状突起スパイン密度が増え、シナプス可塑性が改善しました。シナプス可塑性とは、神経細胞同士のつながりが強まったり弱まったりする性質です。
若いマウスの血漿を高齢マウスに投与した実験でも、恐怖条件づけや空間学習・記憶に関する課題で改善が見られました。海馬のCREB(遺伝子の働きを調節するタンパク質)の活性化が、こうした変化の一部を仲介しました。








