
核融合発電所を開発する米Type One Energyは、2026年10月6日にシリーズBの資金調達で2億ドルを確保しました。同社は初の商用発電所「Infinity Two」の2034年稼働を目指し、設計を自社で担い、製造を外部の協力企業に委ねる事業モデルを進めています。クリストファー・モーリー最高経営責任者(CEO)は、今回の調達によって初の発電所に必要な資金の約半分に達する見通しを示しました。
製造設備を抱えず、協力企業と発電所を建設
Type One Energyは、2019年に設立された米テネシー州ノックスビルの企業です。今回の調達は、既存投資家のBreakthrough Energy VenturesとClutterbuck Capitalが主導し、Lowercarbon Capital、Siemens Energy Ventures、SiteGround Capitalも参加しました。
同社は発電所と多くの部品を設計し、プロジェクトに合わせて選んだ供給企業に製造を依頼する方針です。モーリー氏は、部品の多くを社内で製造する方式と比べて、商用化に必要な資金を抑えられると説明しています。2034年までに稼働できれば、その後に追加の資金調達を行ったとしても、多くの競合より少ない資金で初の発電所を完成できるという見通しです。
建設予定地は、電力事業者Tennessee Valley Authority(TVA)のBull Run敷地で、同社は最初の2基の核融合装置をここに設置します。インフラ分野のコンサルティング企業AECOMがInfinity Twoのエンジニアリングに携わり、核融合企業Commonwealth Fusion Systems(CFS)は高温超電導磁石の技術を供与しています。
他社製の部品を組み合わせて製品を完成させる企業は、インテグレーターと呼ばれます。この方式は外部の専門性を活用できる一方、社内部門に比べて供給企業を管理しにくくなるとTechCrunchは指摘しています。モーリー氏は、自社の担当領域で専門性を高め、リスク管理に集中できることが、この事業モデルの利点だと説明しています。
ステラレーター方式で連続運転を目指す
Infinity Twoは、磁石による磁場でプラズマを閉じ込めるステラレーター方式を採用します。Type One Energyは、超電導磁石を用いるこの発電所の物理設計の基礎を、7本の査読付き論文として公表しています。設計ではプラズマの性能だけでなく、起動、建設、信頼性、経済性の関係も扱っています。
同社の設計に関わる研究者らは、ステラレーターの特徴として、プラズマに電流を流し続けるための電流駆動が不要で、定常運転が可能なことを挙げています。Infinity Twoは、非平面のモジュール型磁石と、最適化したプラズマ形状を組み合わせる設計です。複雑な形状に対応するため、プラズマの挙動を予測する計算と最適化が設計上の重要な役割を担います。
Type One Energyは、CFSを通じてマサチューセッツ工科大学(MIT)の高温超電導ケーブル技術をステラレーターに使用する独占的な権利を確保しました。また、米オークリッジ国立研究所のスーパーコンピューター「Frontier」などを使い、プラズマのシミュレーションを行っています。
連続運転には、炉の形状に応じた工学上の課題もあります。別のステラレーター設計を対象とした研究では、外部からの電流駆動が不要という利点とともに、構造の複雑さや保守作業の難しさが挙げられています。Infinity Twoの設計でも、熱や粒子を排出する装置と、遮蔽や燃料となるトリチウムの増殖を担う「ブランケット」を配置する空間を確保しています。
正味の電力供給には発電所全体の設計が関わる
2034年の商用稼働を目指すInfinity Twoは、重水素とトリチウムを燃料とする設計です。ステラレーターを発電炉として検討した研究では、燃料のトリチウムを生み出す性能に加え、部材の損傷、核反応による加熱、遮蔽などが評価対象になっています。これらは、プラズマの閉じ込めと並ぶ発電炉の工学的な検討事項です。
核融合反応で発生するエネルギーと、発電所が外部へ供給する正味の電力は異なります。トカマク方式の発電所を対象にした熱管理研究では、加熱、電流駆動、冷却材のポンプ、低温設備などが消費する電力も含めて、発電所全体の電力収支を評価しています。Infinity Twoでは不要なプラズマの電流駆動は、トカマクの定常運転では効率化が求められる項目の一つです。
同研究では、連続運転を目指す場合でも、不純物の蓄積や材料の許容温度、起動・停止に必要なエネルギーが正味の電力供給に関わるとしています。ステラレーター方式を採用するInfinity Twoでも、Type One Energyはプラズマ性能と保守、発電所の稼働率を結び付けた設計を進めています。
CFSの累計調達額は40億ドル
Type One Energyに磁石技術を供与するCFSは、2026年7月30日に10億ドルの追加調達を公表しています。CFSの累計調達額は、この調達によって40億ドルに達しました。
Type One Energyの2億ドルは今回のラウンド単独の金額で、CFSの40億ドルは累計額です。








