Clostridium difficile EM
写真: CDC/ Lois S. Wiggs / Public domain / Wikimedia Commons

腸内細菌叢を保つ候補薬を確認

研究チームは、抗菌物質アルギリンBが腸内細菌の一種である Clostridioides difficile(C. difficile)に作用し、腸内の有益な微生物への影響を抑える可能性を示しました。実験室と感染マウスで効果を確認したと報告していますが、臨床で使える治療薬になるかは今後の研究で検証されます。

C. difficileは多くの人の腸内に少数存在しても症状を起こさない一方、幅広い細菌を標的にする抗菌薬で腸内細菌叢のバランスが崩れると、増殖して腸の炎症を引き起こすことがあります。細菌が作る毒素は重い炎症につながる場合があり、感染後に再発を繰り返すことも治療上の課題です。

アルギリン類は、土壌に生息する粘液細菌から見つかった天然物質です。研究チームは、アルギリンBが実験室でC. difficileの増殖を抑え、感染マウスでも菌量を大きく減らしたと報告しています。

EF-Gに作用して細菌の増殖を抑える

アルギリンBはC. difficileの伸長因子G(EF-G)を標的にします。EF-Gは細菌のタンパク質合成に関わる分子で、アルギリン類はこれまで別の病原菌でも同じ標的に作用することが知られていました。

アルギリンBはEF-Gに結合し、リボソーム上で進むタンパク質合成の過程に干渉します。その結果、細菌のタンパク質合成が妨げられ、C. difficileの増殖が抑えられます。

研究チームは、アルギリンBの抗菌作用は狭い範囲にとどまり、腸内の常在細菌にはほとんど作用しないと報告しました。感染マウスでは腸内細菌叢の機能が保たれ、抗菌薬で損なわれた細菌叢の回復を助ける可能性も示されています。

大腸にとどまり、全身への移行は少ない

マウスにアルギリンBを経口投与した実験では、血流に入る量は少なく、多くが大腸にとどまりました。C. difficile感染が起きる部位に物質が集まる性質は、候補薬として研究を進めるうえで注目されています。

アルギリンBは既存治療とは異なる作用機序を持つ一方、標的遺伝子の点変異による耐性が低頻度で生じました。

これらは実験モデルで得られた知見です。研究チームは、効果が最大となる用量を調べ、再発性の感染に対する効果も追加のモデルで検証する予定です。

再発例で使われる治療との位置づけ

再発性C. difficile感染症では、糞便微生物叢移植(FMT)という、健康な人由来の腸内細菌を患者に移す治療が用いられます。デンマークで行われた64人の無作為化試験では、バンコマイシン投与後にFMTを受けた24人のうち17人(71%)で、8週時点の臨床的改善と毒素検査陰性の両方が確認されました。

同じ試験では、フィダキソマイシン群24人のうち8人(33%)、バンコマイシン群16人のうち3人(19%)が同じ複合評価を満たしました。臨床症状の改善は、FMT群22人(92%)、フィダキソマイシン群10人(42%)、バンコマイシン群3人(19%)でした。

別の系統的レビューとメタ解析は、再発性の感染に対するFMTの8週時点の臨床効果を、複数回実施で91%、1回実施で84%と推定しました。効果は実施方法や回数によって異なり、複数回のFMTは標準的な抗菌薬と比べて治療必要数が1.5人と報告されています。

FMTや抗菌薬を対象にした臨床研究とは検証段階が異なり、アルギリンBが再発を減らす治療として有効かどうかは、今後の実験で評価されます。