ウクライナの国営鉄道会社ウクルザリズニツァは、ロシアのドローン攻撃に伴い、9月だけで5,831本の列車から乗客を避難させました。 鉄道施設への攻撃が増えるなか、同社は定時運行より乗客と乗務員の安全を優先し、冬に備えて避難用の物資や移動式シェルターを準備しています。

機関車の被害、全面侵攻以降の約6割が2026年に集中

ウクルザリズニツァによると、2022年のロシアによる全面侵攻開始以降、攻撃を受けた機関車は521両に上り、その約6割が2026年の被害です。 鉄道施設への攻撃件数も、2025年の1,206件に対し、2026年はすでに1,700件に達しています。

ロシアのドローンが走行中の旅客列車を攻撃し始めたのは2025年末で、乗客は前線から離れた地域でも避難や長時間の遅延に直面しています。 同社トップのオレクサンドル・ペルツォフスキー氏は、戦時下でも維持してきた定時運行について語る一方、現在は乗客と乗務員の命を最優先にしていると述べています。

ウクライナでは、ロシアが軍事行動を始めた2022年2月24日、武器や軍用装備の使用による飛行の危険を理由に、民間航空機向けの空域が閉鎖されました。 ウィズエアーとライアンエアーも運航を停止しており、航空便が止まるなか、鉄道は全面侵攻後も国内の移動を支えてきました。

ロシア国防省は民間人を標的にしていることを否定し、鉄道への攻撃は軍人や軍用装備の輸送に使われるインフラを狙ったものだと主張しています。 一方、ウクルザリズニツァの集計では、2026年に職員8人が死亡し、うち6人はキーウの機関車基地への弾道ミサイル攻撃で亡くなりました。

国境付近で6時間待機、深夜の避難中にも爆発

ハルキウ在住のユリア・ポノマレンコさんは、9月にワルシャワへ向かう途中、ウクライナとポーランドの国境手前で列車からの避難を求められました。 近くの機関車にロシアのドローンが命中し、消火と線路の片付けが終わるまで、乗客は6時間待ちました。

17歳のアナスタシア・リバルチェンコさんも、9月16日にオデーサからキロヴォフラードへ移動中、午前4時に列車を降りるよう求められました。 約1時間半後、乗客が暗闇の中で待つ近くにドローンが着弾し、大きな爆発音を受けて人々は林へ逃げました。

このとき列車に損傷はありませんでしたが、さらに爆発が続いたため、リバルチェンコさんは徒歩で移動を再開し、その後、両親に迎えられました。 列車から避難した乗客は、通信アプリのTelegramでドローンやミサイルの情報を探し、家族や友人に遅延を知らせながら待っています。

カメラとメッシュ通信が移動目標への攻撃を支える

ペルツォフスキー氏は、ロシアが使うShahed系ドローンについて、カメラとメッシュ通信による精度が、移動する目標への攻撃を可能にしていると説明しています。 また、最近の一部の機体には、AIツールや画像認識が搭載されていると述べています。

このうちメッシュ通信は、各機器がほかの機器の通信を中継し、ネットワークを組む仕組みです。 軍事技術専門家のセルヒー・ベスクレストノフ氏によると、ウクライナの専門家は2025年7月以降、Shahedの機体からメッシュ通信機器を検出するようになりました。

調べられた機体では、機首のカメラが前方の映像を捉え、飛行の操作や目標への誘導に使えるとされています。 列車への攻撃で問題となっているカメラと通信の組み合わせに対し、ウクライナ側はドローンの接続を妨害する電子的な手段を重視しています。

地下拠点で脅威を監視し、厳冬期の避難に備える

ウクルザリズニツァは、キーウの地下に設けた「アイアン・コマンド・センター」で、列車の位置と脅威をリアルタイムに監視しています。 画面には旅客列車と貨物列車が色分けして表示され、ドローンの周囲には100キロメートルの範囲を示す円が描かれます。

この円の内側にある旅客列車では、乗客を避難させる運用です。 再乗車を認めるのは、列車が円の外に出て、ドローンも引き続き遠ざかっている場合で、ペルツォフスキー氏は列車や乗務員を差し迫った攻撃範囲に置かないことを任務に掲げています。

避難の対象は走行中の列車だけではありません。 キーウ中央駅でも空襲警報に伴う避難が行われ、乗客は正面入口の外で待ったり、地下通路に身を寄せたりしています。

冬には、屋外の気温が氷点下20度以下になり、地面に深く雪が積もることもあります。 同社は国際的な支援者とともに、冬用の避難物資セットや移動式シェルターを準備し、避難が頻発する地域ではバスの運行も用意しています。