
スバルは、トヨタとの共同開発に依存しない電気自動車(EV)向けの車台や電池、電子制御技術を開発しています。最高出力510馬力の試作車で技術を検証し、一部は2029年ごろの量産投入を視野に入れています。
510馬力の試作車で独自技術を検証
試作車は四輪駆動で、停止状態から時速100キロまで4秒未満で加速します。量産車の形状や性能を確定したものではなく、新しい車台や駆動系を試す開発車両です。
スバルは、車両の基礎技術から自社の設計方針を反映できる体制を目指しています。開発担当役員の綿森孝友氏は、基盤技術を管理することで、安全性や走行特性に関するブランドの特徴を保ちやすくなると説明しています。
新しい車台では、現在のスバル製EVと比べて車両重量を100キロ減らすことを目標にしています。前部構造には、衝突時の力を分散するため、前輪の上側に沿って曲がる支持部を設けています。前モーターも衝撃を逃がすよう回転する設計です。
トヨタとの共同開発から広げる独自性
スバル初の現代的な量産EVであるソルテラは、トヨタbZ4Xと共通の専用車台を使って共同開発されました。2022年時点の仕様では、両車は車台を共有し、ソルテラの電池もトヨタから供給されていました。
同時点で、ソルテラは2基のモーターで合計215馬力を発生し、bZ4Xにも2モーター仕様がありました。一方、bZ4Xには前輪駆動の標準仕様もあり、ソルテラは全車四輪駆動という違いがありました。ソルテラはシンメトリカルAWDを標準装備し、X-MODEで駆動力やトラクションを制御します。
スバルはトレイルシーカーの四輪駆動開発やモーター調整にも関与してきました。独自車台では、車両全体の設計に関わる範囲を広げようとしています。新基盤の試作車では、アイシンが駆動ユニットを、パナソニック エナジーが電池を担当しています。自社開発を進めながら、部品の専門企業とも協業する体制です。
電池とモーターの軽量化を目指す
試作車の電池パックには円筒形セルを4,000個搭載しています。スバルは従来の電池より重量を25%減らし、エネルギー密度を業界平均より20%高めることを目標にしています。
モーターは現行EV用より小型・軽量で、スバルは効率が30%改善したとしています。試作車を運転したLOVECARS!TV!のレビューでは、コーナーでの安定感や、BRZのように曲がろうとする感覚が評価されました。試乗は速度制限のあるコースを2周した段階の印象です。
ソルテラとbZ4Xの比較では、ソルテラの最大荷室容量は63.5立方フィート、bZ4Xは56.9立方フィートとされています。こうした既存車の差別化に加え、スバルは独自基盤で車両設計の自由度を高めようとしています。
統合制御ユニットでソフトウェアも内製
スバルは、運転支援、車体、駆動系、インフォテインメントを管理する統合電子制御ユニットを開発しています。AMDと開発した専用チップを使い、将来のEyeSight運転支援システムにAI機能を加えるほか、独自開発車として初めて無線ソフトウェア更新(OTA)にも対応する計画です。
車載OTAでは、車両が携帯電話網を通じて更新データを受け取り、車内の管理機能が各電子制御ユニット(ECU)へ配布する方式があります。複数のECUを更新する場合、管理機能が実行時期を調整し、更新後に完了をサーバーへ通知します。更新対象の車両やソフトウェア版を照合し、正規の更新かを確認する仕組みもあります。
車載電子機器の集中化では、複数の機能を少数の高性能な制御装置で扱い、ソフトウェア更新に対応する構成が検討されています。ゾーン型の構成では、中央計算機と各ゾーンの入出力制御装置が車両の機能を分担します。こうした構成は配線や制御装置の数を減らせる一方、高い開発投資やサイバーセキュリティ上の課題も伴います。
2029年ごろの投入と事業拡大を計画
スバルは試作車の技術を通常の半分ほどの期間で開発したとし、この手法を将来のガソリン車やハイブリッド車にも生かす考えです。一部技術の量産投入時期は2029年ごろとされています。
スバルは2030年代前半に年間120万台の販売を目指し、その時期までに新型車10車種を投入する計画です。2025年の世界販売台数は約92万4,000台で、トヨタは1,100万台を超えました。
独自開発を進める計画は、トヨタとの協業を終えることを意味するものではありません。スバルは既存の協業を続けながら、車台、電池、電子制御の開発で自社が担う範囲を広げようとしています。










