
スペイン中部アルカラ・デ・エナーレスにあるラレド宮殿は、ネオ・ムデハル、ネオ・ゴシック、モダニズムの要素を組み合わせた19世紀の建築です。1886年に完成し、現在は小規模な博物館として利用されています。内部にはアルハンブラ宮殿を思わせる小部屋や、多言語聖書の複製もあります。

1886年に完成した複合様式の宮殿
宮殿をつくったマヌエル・ホセ・ラレド(1842〜1896年)は、アルカラ市長を務めた画家、装飾家、修復家です。公式の建築家はフアン・ホセ・デ・ウルキホですが、計画から内装までラレド自身が指揮しました。ウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動にも着想を得ています。

ネオ・ムデハル様式は、スペインやラテンアメリカで16〜19世紀の様式の特徴が継承・復興されたものを指します。その背景にあるムデハル様式は、スペインとポルトガルで発展し、イスラム建築とキリスト教建築の要素が融合した建築様式です。
ムデハル様式では、壁面の幾何学文様や、れんが、タイル、石膏細工などの装飾が特徴です。ネオ・ムデハルは、こうした過去の様式の特徴を後世に取り入れた建築の潮流です。ラレド宮殿はネオ・ゴシックやモダニズムの要素も組み合わせています。
れんがの外観と尖塔
宮殿の外壁は幾何学模様を施したれんが造りです。窓のあるギャラリーにはムーア風の格子が取り入れられています。宮殿は駅から歴史地区へ向かう道沿いにあります。
外観の特徴の一つは、時計塔を兼ねたミナレット風の塔です。頂部は緑と白の釉薬をかけた陶器の鱗状タイルで覆われています。
内部では、ラレドがモダニズム風の装飾やポンペイの壁画に着想を得たモチーフを描きました。王たちの肖像画を並べた「王の間」には、中世の宇宙観を表す天井画があります。
建物の各所に取り入れた歴史的建材
小さな「アラブの間」は、細かなムカルナス装飾を施した石膏細工と、グラナダのアルハンブラ宮殿に着想を得たタイルで飾られています。ムカルナスは、天井や壁面に小さな凹凸を組み合わせた装飾です。
ラレドは、ほかの建物に由来する建築部材も宮殿に取り入れました。サントルカス城のヴォールトと柱、ティエンダ侯爵宮殿の格天井、ペドロ1世宮殿のタイルなどが使われています。ヴォールトはアーチ状の天井構造、格天井は格子状に区切った天井です。
博物館で見られる多言語聖書の複製
現在の宮殿には小規模な博物館があり、「コンプルテンセ多言語聖書」の全巻複製を展示しています。この聖書は世界初の多言語聖書とされています。
1514年の刊行物として登録された同聖書には、ラテン語、スペイン語、共通ギリシャ語、ヘブライ語、アラム語が使われています。複製のデジタル公開情報には、旧約・新約聖書で扱われる言語や、関連する辞書・文法書も記載されています。
建物はアルカラ大学が管理しており、アルカラ・デ・エナーレス近郊の通勤列車駅からも近い場所にあります。開館時間は毎日10時30分〜13時30分と16時30分〜18時30分です。











