Bitchat screenshot
写真: Meow / Public domain / Wikimedia Commons

フランスでJack Dorseyが関わるメッセージアプリ「Bitchat」が、App Storeのソーシャルネットワーキング部門で1位となり、全カテゴリの無料アプリでもトップ10に入りました。生活費高騰への抗議活動や政府によるSNS規制をめぐる議論、携帯電話網の大規模障害が続いた時期の上昇です。

抗議活動と携帯電話網の障害が重なった

10月17日の抗議活動には数十万人が参加し、周辺では略奪や暴力も発生しました。10月19日には、ガブリエル・アタル元首相がRTLラジオで、暴動が起きている地域に限り、一時的にSNSを遮断できるようにすべきだと述べました。

内相のローラン・ヌニェスも上院で、SNSが暴力に関わる問題になっていると発言しました。略奪の調整に使われるプラットフォームの停止は選択肢になり得るものの、実施には国務院が定める厳格な条件が適用されるとしています。

さらに10月21日、OrangeとSoshの携帯電話サービスは午前11時20分ごろから午後9時ごろまで大きく使いにくくなりました。フランスの報道では、同社にとってその年3回目の全国規模の障害とされ、数百万人に影響する可能性がありました。

Bitchatの通信と暗号化

Bitchatは主にBluetoothメッシュを使い、近くの端末がメッセージを中継します。インターネット接続やアカウント、電話番号がなくても近隣の端末間で通信でき、公開チャンネル「#mesh」はアプリを持つ近くの利用者が読めます。個別メッセージにはNoise Protocol Frameworkによるエンドツーエンド暗号化が使われます。

メッシュ通信では、端末が受信したパケットを別の端末へ中継し、送信元から直接届かない相手にも届けます。Bluetoothメッシュ仕様では、リレー端末がパケットを再送し、転送回数の上限や重複パケットの記録などで不要な通信を抑えます。この仕組みの説明は、BitchatがBluetoothメッシュ1.0仕様を採用していることを意味しません。

Noiseでは、通信する双方がハンドシェイクで公開鍵を交換し、Diffie-Hellman鍵共有から共通の秘密鍵を導きます。その後、共通鍵で通信内容を暗号化し、認証付き暗号で改ざんも検出します。

中継網にも密度や干渉による制約

Bluetoothメッシュの評価研究では、通信の遅延や信頼性が、広告とスキャンのタイミング設定の組み合わせに左右されました。シミュレーションでは、厳しいネットワーク条件のもとでも10ホップ超の平均遅延は約250ミリ秒でした。一方、端末が密集するとブロードキャストストームが起きやすく、通信の信頼性が下がる課題も示されました。

同研究は、Bluetooth Low Energyの40チャネルのうち通信に使う3チャネルに制限した場合でも、無線LANなど外部からの干渉を受けると報告しています。近くに中継端末が多いだけでは通信が安定するとは限らず、混雑や電波環境も伝達に影響します。

Bitchatでは、フランスの地理情報チャンネルが活発になり、処理性能に問題が出ていると、匿名の貢献者Calleが投稿しました。インターネットに依存しない通信経路があっても、あらゆる通信障害を代替できるわけではありません。Bluetoothの通信範囲を超える相手への到達や混雑時の安定性は、中継できる端末と電波環境に左右されます。

抗議や規制への懸念で繰り返す関心の高まり

Bitchatは2025年、Jack DorseyがBluetoothメッシュなどを学ぶ週末プロジェクトとして発表しました。インターネット接続がある場合は、より遠距離または地理情報に基づくチャンネルでNostrプロトコルも利用できます。Androidでは、アプリ本体をインターネットやアプリストアなしで端末間共有できるとされています。

抗議活動やインターネット規制への懸念が出た地域では、過去にもBitchatのダウンロードが増えました。ウガンダでは選挙前に野党指導者ボビ・ワインが利用を呼びかけ、数十万件のAndroidインストールが続きました。イランでは1月の騒乱と通信規制の時期に利用が増え、ネパールのSNS規制やジャマイカのハリケーン後にも関心の高まりが報告されています。

一方、中国ではサイバースペース管理局の要請を受けてAppleが中国向けApp Storeから削除し、インドでも抗議活動中の利用増加後に政府がApp StoreとGoogle Playからの削除を求めました。Appleは、アプリは提供される各地域の法的要件に従う必要があると説明しています。フランスでは、ニューカレドニアでのTikTok遮断をめぐる判断などがありました。