ホタルの点滅パターンを手掛かりに、パルサーのような規則的な天体信号の中から技術的な信号を見分けるモデルが提案されました。信号の意味を解読したり、複雑さを条件にしたりせず、自然の背景との違いに注目します。研究チームはオーストラリアの電波望遠鏡データを使ってパルス列をシミュレーションしましたが、地球外文明の信号を実際に検出した研究ではありません。
自然の背景から際立つパターンを探す
地球外知的生命探査(SETI)では、これまで人間の技術や通信を手掛かりに、複雑で解読できる可能性のある信号を探す方法が中心でした。今回のモデルは、信号が何を伝えるかではなく、周囲の自然現象と比べてどのような構造を持つかに注目します。
従来の電波探査では、狭い周波数帯に集中する信号や、送信側と受信側の相対運動に応じて周波数が変化する信号が、技術的な信号の候補として扱われてきました。820個の近傍星を対象にした機械学習の探査では、480時間を超える観測データから、再観測に値する8件の信号が選ばれました。
ただし、候補らしく見える信号が技術由来とは限りません。プロキシマ・ケンタウリの観測で見つかった約982メガヘルツの信号「blc1」は、詳細な検証の結果、地元の干渉源が生んだ信号と判定されました。観測対象を向いたときだけ現れるかなど、観測の配置や周波数の変化を確かめる追跡調査が必要です。
パルサーの周期信号を自然の基準にする
パルサーは、強い磁場を持つ中性子星が高速で自転し、電磁波を周期的に放つ天体です。放射が地球の方向を向くと、灯台の光のように繰り返すパルスとして観測されます。
山形大学が開発した高速観測装置IMONYは、光を光子として一つずつ検出し、到来時刻を100ナノ秒の分解能で記録します。研究チームは口径3.8メートルのせいめい望遠鏡に搭載し、カニパルサーを2024年2月5日から11日まで観測しました。自転周期約0.034秒ごとの可視光パルスを捉え、到来時刻が数日かけてずれる兆候も見つけています。
電波パルスは自転のタイミングを精密に測る基準となり、可視光のパルスと比較できます。IMONYによる観測では、可視光パルスが電波パルスより200〜300マイクロ秒先行し、数日スケールで到来時刻が変化する可能性が示されました。巨大電波パルスが起きた瞬間には、カニパルサーのX線パルスも約4%増光することが、X線と電波の同時観測で検出されています。
ホタルは種ごとの点滅で交信する
ホタルの成虫は、種ごとに異なる発光パターンを交信に使います。オスが飛びながら点滅し、メスが応答する種もあり、点滅は一度だけのものから、最大9回のパルスを並べるものまであります。
同じ場所に複数種がいても、点滅のタイミングや飛び方の違いは種を見分ける手掛かりになります。発光パターンは、メスが交尾相手を識別するやり取りにも使われます。ホタルの発光は捕食者への警告としても機能すると考えられており、発光には交信以外の役割もあります。
発光の色や活動する時間帯、生息する高さや環境も、種を区別する手掛かりです。種によって黄色から青緑色に近い光を出し、夕暮れに点滅する種もあれば、もっと遅い時間に活動する種もいます。こうした違いは、同じ地域にいる種どうしの混同を減らす仕組みとして説明されています。
模擬信号で検証する新しい探し方
今回のモデルは、オーストラリアの電波望遠鏡施設が公開するパルサーのデータをもとに、周囲のパルサー集団とは異なる特徴を持つパルス列を生成しました。ホタルの発光が複雑な背景の中で見分けられることを手本に、信号の複雑さや意味の解読ではなく、自然な背景との構造上の違いを探します。
そのため、この方法は狭帯域信号など既存の探査で想定される特徴とは異なる形の信号も、検出対象にできる可能性があります。自然現象が規則的なパルスを生む場合でも、その背景にある信号群と異なるパターンを手掛かりにする設計です。
既知の自然信号や観測装置由来の干渉と区別できるかを確かめることが、今後の検証課題になります。











