A Box of Treasure from Asteroid Ryugu (SVS14089 - Ryugu Science March 2023 V3)
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リュウグウ試料から5種類すべてを検出

小惑星リュウグウから採取された試料で、DNAとRNAを構成する主要な核酸塩基5種類が確認されました。遺伝情報を担う分子の材料が、地球外の小惑星にも存在します。ただし、塩基の検出は生命そのものや、生命が宇宙で誕生したことを示すものではありません。

核酸塩基は、遺伝情報を担うDNAやRNAの配列を形づくる分子です。今回確認されたのは、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルです。アデニンとグアニンはプリン塩基、残る3種類はピリミジン塩基に分類されます。

試料はJAXA(宇宙航空研究開発機構)の探査機「はやぶさ2」がリュウグウから採取し、地球へ持ち帰ったものです。先行する分析ではウラシルが見つかっていましたが、今回の研究では2つの試料を調べ、主要な5種類すべてを確認しました。

地球由来の汚染を抑えた試料分析

小惑星の試料を直接採取して地球へ運ぶ方法なら、地上に落下した隕石とは異なり、大気や地表に触れる前の物質を調べられます。リュウグウの試料は宇宙空間で採取され、地球の環境にさらされないよう封じられていました。

研究チームは、リュウグウの2試料から水と塩酸で成分を抽出し、分析機器で塩基を調べました。抽出物に現れた信号の保持時間を標準物質と照合し、別の分析法でもプリン塩基とピリミジン塩基の存在を確かめました。

この手順で、アデニンやグアニンなどに加え、シトシン、ウラシル、チミンも検出されました。過去の分析で見つかった塩基の種類が限られていたことについて、研究チームは、先行研究で利用できる試料量が少なかった可能性を挙げています。

小惑星ごとに異なる塩基の比率

5種類の存在が確認された一方、塩基の構成比は天体によって異なります。リュウグウではプリン塩基とピリミジン塩基がほぼ同じ量だったのに対し、マーチソン隕石ではプリン塩基が多く、ベンヌ小惑星とオルゲイユ隕石ではピリミジン塩基が多い結果でした。

研究チームは、リュウグウ、ベンヌ、オルゲイユの試料を比較し、アンモニア量とプリン塩基・ピリミジン塩基の比率との間に負の相関があると報告しました。この相関は、アンモニア量が多いほど特定の塩基が形成されるという因果関係を直接証明するものではありません。

研究チームは、これらの塩基が共通する形成経路を経た可能性と、天体ごとの物理化学的環境が分布に関わった可能性を示しています。リュウグウの結果は宇宙での有機分子形成を考える手がかりになりますが、塩基の組成だけで生命の起源を特定するものではありません。

生命の成立には塩基以外の段階も必要

核酸塩基は、糖やリン酸と結びつくことでヌクレオチドになります。ヌクレオチドはDNAやRNAを構成する単位であり、塩基が見つかったことと、遺伝情報を担う分子が完成していることは別の段階です。

また、リュウグウで検出されたのは分子であって、生物や生命活動ではありません。生命の成立には、塩基を含む材料がどのように組み合わさり、複製や進化につながる仕組みを持つに至ったかという課題が残ります。

初期の地球にこうした物質が運ばれ、生命誕生前の化学物質の蓄積に寄与したという仮説を、今回の結果は補強します。地球上で生命がどのように成立したかを解明するには、分子の形成後の過程も明らかにする必要があります。