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出典: EurekAlert!

木材産業の副産物リグノスルホン酸塩を、水を使った工程でナトリウムイオン電池向けの炭素ナノファイバーに変える研究が発表されました。リチウムより豊富なナトリウムを使う電池の材料候補を、廃棄物由来の原料から作る試みです。研究チームは、材料のナノスケールの構造を調整し、充放電時のナトリウムイオンの貯蔵と放出を改善したと説明しています。

リグノスルホン酸塩から電池材料を作製

リグノスルホン酸塩は、パルプ・製紙産業に由来する副産物です。リムリック大学とバレンシア大学の研究者らは、これをほかの天然由来成分と組み合わせ、細い繊維を作りました。

研究チームは、得られた繊維をエネルギー貯蔵向けの炭素構造に変換しました。研究を率いたリムリック大学のモーリス・コリンズ教授によると、炭素材料の内部構造を調整し、ナトリウムイオンを効率よく貯蔵・放出できるようにしたといいます。

この研究では、リグノスルホン酸塩の新たな用途を探るとともに、処理中に炭素の化学的性質や構造がどう変わるかを調べました。筆頭著者のジュディス・ミラルダ=ジャレ氏は、材料設計に役立つ知見を得たと述べています。

水を使い、合成バインダーを使わない工程

研究チームが開発した工程では、有機溶剤の代わりに水を使います。また、電池材料の製造で一般的に使われる合成バインダーや添加剤も必要としないとしています。

コリンズ教授は、産業副産物を原料に使い、水で処理して内部構造を調整する工程を材料開発に組み込んだと説明しました。研究チームは、この方法で作った材料をナトリウムイオン電池向けに設計しました。

今回発表されたのは、炭素ナノファイバー材料に関する研究です。

ナトリウムイオン電池の資源面と課題

IRENA(国際再生可能エネルギー機関)は、ナトリウムイオン電池が炭酸ナトリウムなど豊富な原料を利用し、リチウムイオン電池の供給網を補完し得ると整理しています。ナトリウム資源が幅広く分布しているため、供給途絶や価格変動に伴うリスクを抑えられる可能性があります。

一方、IRENAはナトリウムイオン電池を発展途上の技術と位置づけ、リチウムイオン電池に比べてエネルギー密度を高める必要があるとしています。今後市場に広がるかどうかは、コストとエネルギー密度でリチウムイオン電池に並び、生産を効率よく拡大できるかに左右されます。

IRENAによると、電気自動車と定置型蓄電の双方で電池需要が増えています。IRENAの2025年時点の想定では、ナトリウムイオン電池が2030年の電気自動車用電池需要に占める割合は10%未満です。リムリック大学の研究は、資源の入手性に利点がある電池化学を支える材料開発の一例です。実用化には、電池としての性能や生産規模も関わります。

材料の構造を調整する研究の位置づけ

ナトリウムイオン電池は構造がリチウムイオン電池に似ており、製造側は既存の知識や経験を活用できるとIRENAは説明しています。一方、ナトリウムを使うだけでリチウムイオン電池と同じエネルギー密度やコストになるわけではなく、性能の改善が課題です。

今回の研究では、炭素材料のナノ構造を調整し、ナトリウムイオンの出入りを改善する方法を検討しました。原料の入手性や処理方法に加え、材料内部の構造も研究対象です。

研究成果は学術誌「Advanced Materials」に掲載されました。