PICA Heatshield
出典: nasa.gov

NASAは、国際宇宙ステーション(ISS)から帰還する貨物船に12個の小型カプセルを載せ、再突入時の熱防護材を試験しています。実験「KREPE-3」では、貨物船が大気圏で分解する過程を利用し、複数の材料や形状について飛行データを集めます。月や火星などのミッションに向け、熱シールドの設計を検証する取り組みです。

貨物船の帰還を利用するKREPE-3

KREPE-3は、ケンタッキー大学、NASAの複数施設、州政府などが協力する実験で、シリーズ3回目に当たります。カプセルはケンタッキー大学の学生が設計し、再突入中の温度、圧力、動き、磁場、光を測るセンサーを備えています。

ISSを離れたノースロップ・グラマンのシグナスXL貨物船には、廃棄物とともにカプセルを積み込みました。予定された経路で貨物船が大気圏内で分解するとカプセルが放出され、各材料の性能データを取得します。研究者には衛星通信でデータを送る計画です。

カプセルには、スペースシャトルで使われたセラミックタイルのような実績のある材料と、新しい材料の両方が含まれます。NASAは、飛行中に得るデータを、将来の貨物船や有人機を守る大型熱シールドの研究に役立てる考えです。

消耗して熱を抑えるPICA

試験対象の一つ、フェノール含浸カーボンアブレーター(PICA)は、NASAエイムズ研究センターが1980年代に開発した材料です。アブレーターは、運用中に溶融や蒸発、表面の侵食などで消耗する耐熱材です。多くのアブレーターは熱分解して炭化し、その層が熱負荷を抑えます。

NASAによると、PICAは低密度で、高い熱流束に対するアブレーション能力を持ちます。スターダスト帰還カプセルの前面熱シールド向けに開発され、火星探査機や商業機の再突入にも使われました。

NASAはPICAの表面を段階的に高密度化する方法も開発しています。加熱される外側に炭素系アブレーターを置き、内側を断熱材にする構成では、同様の最大加熱条件で従来の熱防護システムより密度を低くできるとしています。表面処理の密度や深さを調整でき、材料の取り扱いや輸送時の損傷に対する強度も高める設計です。

展開式ADEPTは打ち上げ時に折りたためる

KREPE-3のカプセルの一つは、展開式熱シールド「ADEPT」を試します。NASAの設計では、打ち上げ時に折りたたみ、惑星への進入前に展開します。これにより、既存のロケットに収まる外形から、より大きなエアロシェルへ変形できます。科学観測機器の投入や、他惑星への長期探査を想定しています。

ADEPTは、半剛体の骨組みに柔軟な布状の表面を張る構造です。NASAによると、編み込んだ炭素繊維の布が展開面の約90%を占め、半剛体のリブで支えられます。布の柔軟性によって折りたため、炭素繊維は機体の前面と背面の両側から熱を放射します。

NASAは、ADEPTを低弾道係数の進入システムとして開発しています。剛体エアロシェルでは打ち上げロケットの寸法が機体設計を制約しますが、展開式なら打ち上げ時の収納性と進入時に必要な大きさを分けて設計できます。NASAは、布状の表面を支えるリブや展開機構を含む試作機について、展開、振動、音響、熱真空試験を計画していました。

材料だけでなく形状や計測も検証

KREPE-3では、素材の違いに加え、形状やコンピューターモデルも検証します。NASAエイムズの材料「MERINO」は、炭素繊維とフェノール繊維をフェルト状に縫い合わせたもので、火星探査向けの候補として試験されます。NASAは、火星は大気が薄く、地球への帰還より熱負荷が低いため、より軽い防護材を使える可能性があると説明しています。

別のカプセルでは、二重円すい形状の機体にタングステン製の先端やMERINOを組み合わせ、実測値とコンピューターモデルを照合します。土星の衛星タイタンに到着するNASAの探査機ドラゴンフライを想定した形状のカプセルもあり、再突入時の動的安定性を調べます。

こうした試験では、熱シールドの材料だけでなく、再突入時の熱の測り方も検証します。NASAは、ドイツのシュトゥットガルト大学が開発した熱流束センサーを含む、国内外の協力機関によるカプセルも飛行させます。