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錐体の入れ替わりが中心視の形成に関与

網膜の中心にある中心窩は、細部を見分ける視力を担う領域です。最も中央にある小さな部分「中心窩小窩」では、赤・緑に反応する錐体が密集し、成体では青に反応する錐体は見られません。この配置が胎児期にどう形成されるかを調べた研究で、青錐体の一部が赤・緑錐体に変化する可能性が示されました。

これまで有力だった説明では、発生初期に中心窩小窩に現れた青錐体は、成長に伴って周辺へ移動すると考えられていました。新たな研究結果は、細胞が移動するだけでなく、錐体としての性質自体が変わる経路を示唆しています。ただし、細胞の移動が起きないと結論づけたものではなく、両方の過程を完全には区別していません。

ヒト胎児網膜では、妊娠10週と12週の中心窩小窩に、青色の光受容体タンパク質を発現する錐体が少数見られました。14週以降には、青と赤・緑の両方を発現する細胞や、赤・緑のみを発現する細胞が確認されました。成体の中心窩小窩では赤・緑の錐体だけが見られます。

レチノイン酸と甲状腺ホルモンの働き

研究で示された仕組みには、ビタミンAから作られるレチノイン酸と甲状腺ホルモンが関わります。レチノイン酸を分解する酵素CYP26A1は、中心部で青錐体が増えるのを抑え、赤・緑錐体の形成を促す方向に働くとされます。

培養した網膜オルガノイドでCYP26A1を働かなくしたり、レチノイン酸の量を増やしたりすると、青錐体が増え、赤・緑錐体が減りました。一方、甲状腺ホルモンのシグナルを持続させると、赤・緑の光受容体タンパク質を持つ錐体が増え、青錐体に同じタンパク質が現れる変化も確認されました。

甲状腺ホルモンのシグナルを保つ酵素DIO2も、網膜中心部で継続的に発現していました。研究結果は、CYP26A1によるレチノイン酸の調整が錐体の種類を定め、DIO2を介した甲状腺ホルモンの働きによって一部の青錐体が赤・緑錐体へ移行するというモデルと整合します。これは胎児期の網膜形成に関する知見であり、成人がビタミンAを摂取すれば視力が改善することを示すものではありません。

オルガノイドで見えた再現性と限界

研究では、ヒトの細胞から作る網膜オルガノイドを使い、胎児期の網膜では追いにくい変化を調べました。マウスや魚などはヒトと網膜の構造が異なるため、ヒトの中心窩小窩に特有の錐体配置を調べるモデルとして課題があります。

別の比較研究では、幹細胞由来の網膜オルガノイドは、同程度の発生段階にある胎児網膜と主要な細胞構成がよく似ていました。一方、一部の細胞では遺伝子発現に違いがあり、発生が進んだオルガノイドでは網膜内層の層構造が乱れていました。

同じ培養条件で維持した胎児網膜由来の組織は、少なくとも6カ月にわたって成長し、オルガノイドより網膜内層の層構造を保っていました。こうした比較はオルガノイドの再現性と限界の両方を示しており、今回の錐体研究で得た知見を実際の網膜に応用するには、モデルの改良も課題です。

黄斑変性の治療と細胞移植の距離

網膜中心部が損傷する黄斑変性への応用として、研究チームは、必要な性質を持つ光受容細胞を培養し、将来、損傷した網膜へ移植する可能性を挙げています。移植細胞が生き残り、既存の神経回路につながって安全に機能することを確かめる必要があり、臨床で使える段階には至っていません。

黄斑変性の治療は病型によって異なります。新生血管が関わるタイプでは、抗VEGF薬を眼内に注射し、血管新生に関係する働きを抑える治療が行われています。2023年のレビューは、当時知られていた8種類の抗VEGF薬のうち4種類が登録され、臨床で使われていたと整理しています。

進行したドライ型の一部である地図状萎縮では、網膜の細胞が失われ、中心視力の低下につながることがあります。米国では2023年に、補体系のC3を標的とするペグセタコプランと、C5を標的とするアバシンカプタド・ペゴルが治療薬として承認されました。これらは病気の進行に関わる経路を抑える薬物療法で、失われた視細胞を補うことを目指す細胞移植とは治療上の役割が異なります。