
健康な40〜55歳の成人を対象にした試験で、濃縮トマトペーストを3カ月間毎日食べた期間は、リコピンを制限した食事の期間と比べ、選択的注意と顔・名前の照合成績が改善しました。一方、実行機能の検査では変化が見られず、脳画像の結果も少人数の予備的な分析です。試験で使われたリコピン量は、成人が通常の食事から摂る量の目安を上回っていました。
3カ月間のトマトペースト摂取を比較
試験には健康な成人47人が参加し、42人が完了しました。参加者は、濃縮トマトペーストを毎日食べる期間と、トマトなどリコピンを多く含む食品を制限する期間を、それぞれ3カ月ずつ経験しました。2つの期間の間には、通常の食事に戻る1カ月の休止期間が設けられました。
ペーストの量は体重1キログラム当たり0.5グラムで、平均すると1日約35グラムでした。ペーストにはトマトと塩だけが含まれ、1日当たりのリコピン摂取量は平均38.4ミリグラムでした。参加者はペーストを普段の食事に加え、生または加熱して食べました。
研究では、集中力、文字を見分ける処理速度、顔と名前を結びつけて覚える連想記憶、ルール変更への対応を調べました。食事期間の前後に血液検査と認知機能検査を行い、14人は安静時の脳活動をMRIで撮影しました。参加者と検査担当者は、どちらの食事期間かを知っていました。
注意力と顔・名前の照合で改善
トマトペーストを食べた期間は、集中力の得点が対照期間より7.2ポイント高く、視覚的な処理速度は8.3ポイント高くなりました。いずれも試験開始時の得点に対して約4%に当たる改善です。
顔と名前を照合する課題では、トマトペーストの期間に得点が対照期間より0.8ポイント高くなりました。ただし、顔・名前テスト全体を合算した得点には有意な差がなく、カード分類による実行機能の検査にも意味のある変化は見られませんでした。
血中リコピン濃度は、対照期間には平均0.40マイクロモル/リットルでほぼ変わらず、ペーストを食べた期間には開始時から平均0.40マイクロモル/リットル上昇しました。研究チームは、血中濃度の変化と認知機能の結果を併せて測定しています。
試験のリコピン量と通常の食事の目安
欧州食品安全機関(EFSA)の2008年の評価では、食品から摂るリコピンの平均量は1日0.5〜5ミリグラム、高い摂取量は約8ミリグラムと見積もられています。トマト製品や果物、野菜を多く食べる場合には、1日20ミリグラム以上になることもあるとされています。
38.4ミリグラムという試験の平均量は、EFSAが示した通常の平均摂取量の範囲を上回ります。別の2016年の総説は、欧米での平均摂取量を1日5〜7ミリグラムとしています。この目安と比べると、試験で使われた量はおよそ5〜8倍です。
同じ総説によると、工業化された欧州諸国の摂取量は1日0.7〜1.3ミリグラム、米国では3.7〜16.1ミリグラムと幅があります。地域や食事内容によって通常量に差があるため、試験の摂取量との比較は一つの目安として読む必要があります。
脳画像とBDNFの結果は予備的
BDNFは、神経細胞の生存や成長に関わるタンパク質です。血中濃度はトマトペーストの期間に対照期間より平均15.2ナノグラム/ミリリットル高くなりましたが、増加は境界域にとどまりました。研究チームは、ペーストを先に食べた参加者で、休止期間後もBDNF濃度が高い状態だったことを報告しています。
脳画像を調べた14人では、トマトペーストの期間に前頭頭頂ネットワークと聴覚ネットワークの一部で、領域間の結びつきが弱まりました。これらの変化が大きい人ほど、顔・名前の照合課題の成績向上も大きい傾向がありました。
ただし、脳画像の結果は14人の分析で、複数比較に対する最も厳しい統計補正を通過していません。さらに、参加者が食事条件を知っていたことや、対照期間にトマト以外のリコピン豊富な食品も避けたこと、トマトに含まれるリコピン以外の成分が影響した可能性もあります。今回の結果は、濃縮トマトペーストを一定量摂った場合の短期的な検査成績を示すもので、長期的な認知機能への影響を確定するものではありません。









