
日常の音に起きる強い反応
咀嚼音や鼻をすする音、ペンのノック音など、音量が大きくない日常音に怒りや嫌悪、不安、動悸などを感じる状態は「ミソフォニア」と呼ばれます。反応は音の種類だけでなく、場面や音を出した人によっても変わることがあります。
研究チームは成人341人を調べ、症状が重い人ほど、他人の考えや気持ちを読み取る課題で正確さが低く、回答に時間がかかる傾向を報告しました。年齢、性別、音への敏感さ、不安や抑うつ症状を考慮した分析でも、同様の関連が見られました。
一方、単純な推測や、相手の心を読む必要のない比較課題では正確さに差がありませんでした。研究チームは、心の読み取り全般ではなく、複雑な推測など一部の働きとの関連を示す結果だとしています。
聴覚過敏や音恐怖症との違い
ミソフォニアでは、問題になる音の物理的な大きさより、特定の音のパターンや、その音が本人に持つ意味が反応の強さに関わるとされています。同じ音でも、誰がどの場面で出したかによって反応が異なることがあります。
聴覚過敏は、音の大きさの感じ方が通常より強まる状態です。一方、ミソフォニアでは音量以外の要素が反応を左右する場合があり、Jastreboffらは両者を異なる音への耐性の問題として区別しています。
音恐怖症は、音に対する持続的な恐怖を中心とする状態です。ミソフォニアでは怒りや嫌悪、不安なども反応に含まれ、特定の音への選択的な嫌悪が特徴として挙げられています。ただし、ミソフォニアの診断基準には現在も合意がなく、聴覚や精神疾患との分類をめぐる議論も続いています。
心の読み取りと身体反応
341人を対象とした研究では、ミソフォニアの症状が重い人ほど、他人の感情を見分ける課題で、前向きな感情の判別精度が低い傾向がありました。後ろ向きな感情の判別では同じ差は見られませんでした。
症状が重い人ほど、他人の心の状態を推測する際の確信が弱く、自分の感情も把握しにくい傾向がありました。一方、本人が回答した全般的な共感の強さは、おおむね保たれていました。
きっかけとなる音や動きを自分でもまねる傾向も、症状の重さと関連していました。S-Fiveという症状評価の質問票で87点以上だった参加者のうち、41%がまねをすると答え、その行動は「自分でコントロールを取り戻せた」という感覚と特に結びついていました。この研究が示したのは関連であり、心の読み取りの違いがミソフォニアを引き起こすという因果関係ではありません。
苦痛を和らげる方法をめぐる研究
ミソフォニアに対する治療法は確立していません。2026年の無作為化研究では、成人58人を対象に、短期間の自己曝露、音楽を使う音響療法、待機群を6週間比較しました。
自己曝露群は、事前に決めたきっかけ音を週3回、1回20〜40分聞く課題に取り組みました。音響療法群は、録音された音楽から選んだ曲を週3回、1回20〜40分聞きました。6週時点では、本人が評価した症状の重さに3群間の差はありませんでした。
評価者による改善度は自己曝露群に有利でしたが、中程度または大きな改善と評価されたのは39人中6人で、そのうち5人が自己曝露群でした。別のレビューでは、認知行動療法を含む介入は実施可能で、症状の軽減との関連を報告した研究もある一方、研究の多くは小規模で対照群を欠くと整理されています。
レビューでは、手法や効果測定の違いが大きく、認知行動療法の有効性を確定するには証拠が足りないとしています。自己曝露と音響療法を比較した研究でも、本人評価では群間差がなく、研究者らは治療への反応を高める方法を探る必要性を述べています。








