A human natural killer cell
出典: news.mit.edu

NK細胞を体内で標的化する仕組み

MITの研究チームは、患者の体内にあるNK細胞を遺伝子改変し、がん細胞や異常なT細胞を攻撃させる方法を開発しました。細胞を体外に取り出して加工し、再び戻す工程を省くことを目指しています。

NK細胞は免疫細胞の一種です。CAR(キメラ抗原受容体)を持たせると、特定の目印となる抗原を認識できます。今回の方法では、脂質ナノ粒子(LNP)にメッセンジャーRNA(mRNA)を載せてNK細胞に届けます。mRNAは、標的を認識するCARを作るための情報を運びます。

LNPの表面には、NK細胞の表面受容体に結合する抗体断片が付いています。研究チームは、粒子をNK細胞へ誘導し、CD19を標的にする設計と、自己反応性T細胞にあるCD3を標的にする設計を試しました。

T細胞を狙う治療でNK細胞を使う理由

CAR-T細胞療法では、患者の血液からT細胞を取り出し、CARを発現するよう加工してから患者に戻します。米食品医薬品局(FDA)は、過去10年間に遺伝子改変T細胞を用いるがん治療を7種類承認しており、主にB細胞に由来する白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などが対象です。

T細胞の病気をCAR-T細胞で治療すると、標的となるT細胞の目印を持つ改変細胞同士が攻撃し合う可能性があります。研究チームは、NK細胞ならこの問題を避けながら、T細胞性のがんや自己免疫疾患を狙えると説明しています。

CAR-NK細胞も、従来は細胞を体外で加工してから戻す必要があり、大量製造にはCAR-T細胞と共通する難しさがあります。ダニエル・アンダーソン教授は、患者にナノ粒子を投与して本人のNK細胞を改変できれば、製造工程を簡素化し、費用を抑えられる可能性があると述べました。

マウス実験で見られた腫瘍への効果

マウスにLNPを投与した実験では、標的としたNK細胞のおよそ80%を改変できました。研究チームはこの方法を、がんと自己免疫性肝炎のモデルで検証しました。

悪性度の高いメラノーマのマウスモデルでは、がん細胞を標的とするようNK細胞を改変したマウス5匹のうち3匹で完全寛解が見られました。

ヒトの血液細胞を移植し、一時的にヒトに似た免疫系を持たせたマウスでは、T細胞リンパ腫に対してLNPを5回投与した後、腫瘍が消失しました。この結果は、NK細胞を体外で加工して戻す従来法で治療したマウスと同様でした。

自己免疫性肝炎と今後の研究

自己免疫性肝炎のマウスでは、肝細胞を攻撃する自己反応性T細胞を標的とするCAR-NK細胞が作られました。LNPを1回投与した後、標的のT細胞が破壊され、肝臓の損傷も回復しました。

研究チームは、機能異常のあるT細胞が関わる病気への応用を目指し、候補として多発性硬化症や関節リウマチを挙げています。

CAR-NK細胞療法でFDAが承認した治療法は現在ありません。今回の結果はマウス実験で得られました。