パラボラアンテナと高感度受信機で長距離化

実験では、一般的なコイン型Bluetoothトラッカーと同程度の送信出力を保ちながら、受信側に大型のパラボラアンテナと低雑音の受信機を組み合わせ、通信距離を延ばしました。

パラボラアンテナは、スマートフォンなどに使われる小型のダイポールアンテナより多くの信号を集めます。受信機の雑音を抑えることで、弱くなった信号を受け取りやすくします。

この実験で変えたのは、送信側の出力ではなく受信側のアンテナと受信機です。Bluetoothの通信距離は送信出力だけで決まるわけではなく、受信側で信号を捉える能力も関わります。

受信側の工夫だけでは通信条件を選べない

アンテナの利得を高めても、電波が届く経路に障害物があれば信号は弱まります。建物や樹木などが見通し経路の周囲を遮ると、電波の伝わり方に影響します。

無線リンクの距離は、送信出力、送信側と受信側のアンテナ利得、受信機が扱える信号の強さなどで決まります。受信アンテナの利得を高めることは受信側の条件を改善しますが、送信側の出力を増やすこととは異なります。

長距離の見通し通信では、アンテナの高さや経路上の障害物も考慮されます。電波経路の周辺にある第一フレネルゾーンが遮られると、信号に干渉が生じる場合があります。そのため、受信アンテナだけを高性能にしても、設置場所や向き、経路の条件が合わなければ同じ結果にはなりません。

LoRaは長距離向け、Bluetoothは短距離向け

LoRaは、少量のデータを長距離に送る用途を想定した低消費電力広域通信方式です。比較値では、Bluetoothの通信距離は10メートル、LoRaは都市部で2〜5キロメートル、農村部で5〜15キロメートル、見通しのある環境で15キロメートル超です。

LoRaのデータ速度は毎秒0.3〜5.5キロビットです。

送信出力の比較値はBluetoothが2.5ミリワット、LoRaが20ミリワットです。これは送信時の出力であり、機器全体の電池消費量そのものを示す値ではありません。LoRaの通信距離や電力条件は、Bluetoothの受信側にアンテナを追加した実験とは別の方式上の特性です。

LoRaWANはゲートウェイを介して通信

LoRaWANでは、端末からゲートウェイへ送るアップリンクと、ゲートウェイから端末へ返すダウンリンクの双方向通信ができます。ゲートウェイは複数の端末を扱い、複数の周波数を同時に受信できます。

LoRaWANの仕様は、端末同士がゲートウェイを介さず直接通信する方式をサポートしていません。LoRa端末同士で直接メッセージを送るには、別方式として挙げられているRadioHead Packet Radioライブラリを利用できます。

通信方式を比べる際は、通信距離だけでなく、送るデータ量やネットワーク構成も考慮します。