IL-10を妨げる抗体が見つかる
炎症性腸疾患(IBD)の患者の一部で、炎症を抑えるタンパク質「インターロイキン10(IL-10)」の働きを妨げる自己抗体が見つかりました。約4,900人を調べた研究で、この免疫反応が、重症IBDとの関連が知られていた遺伝的特徴の仕組みを説明する手掛かりになりました。
IBDにはクローン病と潰瘍性大腸炎が含まれます。IL-10は細胞間で情報を伝え、免疫反応による炎症を抑えます。抗体がIL-10を中和すると、この制御が弱まり、炎症が続く可能性があります。
研究では、IL-10を中和する自己抗体がIBD患者の約3.5%で確認されました。クローン病と潰瘍性大腸炎の両方で見つかり、健康な人では確認されませんでした。英国のIBD患者に当てはめると、該当者は1万5,000〜2万人と推計されています。
30年前から知られた遺伝的特徴
HLA-DRB1*01:03という遺伝的特徴は、重症IBDとの関連が約30年前に見つかっていました。しかし、どのように病気につながるのかは分かっていませんでした。今回、この遺伝的特徴を持つ人では、IL-10を妨げる自己抗体が生じる傾向が強いことが示されました。
この関連は、遺伝的リスクと免疫反応を結びつける仕組みを示しています。また、IBDには異なる生物学的な原因を持つ病態が含まれるという見方にもつながります。
研究の手掛かりには、IL-10またはその受容体に生まれつきの異常がある子どもの重症IBDの研究がありました。さらに、IL-10を中和する自己抗体が見つかった大腸炎の子ども2人の例も、遺伝的な異常が引き起こす状態と似た作用を示す可能性を示していました。今回の研究は、この仕組みをより多くのIBD患者で調べています。
既存の生物学的製剤との違い
クローン病で使われる生物学的製剤には、炎症に関わるタンパク質TNFを妨げる薬があります。TNFは免疫活動と炎症を強める信号を伝え、TNF阻害薬はその信号が細胞に届くのを抑えます。
別の種類には、炎症を起こす白血球が血管から腸の組織へ移動するのを抑えるインテグリン阻害薬があります。また、IL-12やIL-23という免疫シグナルを妨げる薬もあり、これらの経路を通じて炎症を抑えます。
今回検討されている治療は、炎症を促す信号や細胞の移動を抑える既存薬とは異なり、IL-10を妨げる自己抗体そのもの、またはその抗体を作る細胞を標的にします。研究チームは、血液検査でこの自己抗体を持つ患者を見分け、原因に応じた治療につなげる可能性を挙げています。
血液検査と治療選択への展開
自己抗体を調べる血液検査が開発されれば、IL-10を妨げる免疫反応が関係する患者を特定し、治療方針を選ぶ手掛かりになる可能性があります。研究チームは、抗体または抗体を作る免疫細胞を標的にする治療を候補として挙げています。
ケンブリッジ大学病院の臨床免疫学者レイナー・ドフィンガー氏は、対象患者を早期に見つけて治療できれば、継続的な薬物治療や入院、手術を減らせる可能性があると述べました。NHS(英国の国民保健サービス)で年間数百万ポンド規模の節約につながり得るとの見方も示していますが、これは治療効果が確認された結果ではなく、同氏の予測です。
自己抗体が見つかった患者を特定できれば、IBD全体に同じ治療を用いるのではなく、病気を引き起こす仕組みに応じて治療を選べます。











