5年間の追跡で心不全や死亡との関連
慢性不眠症の成人を対象にした予備的研究で、メラトニンを1年以上使用した人は、使用記録のない人より心不全の診断や入院、全死亡が多く記録されました。サウジアラビア食品医薬品庁(SFDA)は2026年4月、この関連について安全性シグナルを公表しています。
研究では電子カルテを使い、複数の国の慢性不眠症患者13万828人を5年間追跡しました。長期使用群と、カルテにメラトニンの記録がない比較群は、年齢や性別、健康状態、服用薬など40項目で照合されています。
心不全の新規診断は長期使用群で4.6%、比較群で2.7%でした。心不全による入院は19.0%対6.6%、全死亡は7.8%対4.3%で、研究者らは長期使用とこれらの転帰との関連を報告しました。
因果関係は示されず、当局の評価も予備的
この研究は米国心臓協会(AHA)の2025年学術集会で発表された抄録で、査読済みの論文ではありません。観察データから関連を調べたもので、メラトニンが心不全を引き起こしたと証明するものではないと、AHAは説明しています。
使用状況の分類にも限界があります。研究では電子カルテ上の処方記録を使ったため、米国などで市販サプリメントを購入していた人が比較群に含まれた可能性があり、実際の使用状況を正確に区別できない場合があります。
SFDAは世界保健機関(WHO)のデータベースで4件の報告を確認しましたが、症例情報は評価に十分ではなく、サウジアラビア国内の症例は見つかりませんでした。文献調査で見つかった研究と症例情報を合わせ、メラトニンと心不全の因果関係を示唆する予備的なシグナルと評価しています。
不眠症治療ではCBT-Iが第一選択
欧州睡眠研究学会の2023年ガイドラインは、慢性不眠症に対する第一選択として、不眠症の認知行動療法(CBT-I)を推奨しています。CBT-Iは睡眠に関する考え方や行動に働きかける治療で、対面とデジタルの両方が選択肢とされています。
同ガイドラインでは、メラトニン一般は不眠症治療に推奨されていません。ただし、徐放性メラトニンは55歳を超える患者に最長3カ月使用する選択肢として位置づけられています。
厚生労働省のeJIMが紹介する米国の診療指針でも、慢性不眠症にメラトニンサプリメントを推奨するだけの強い根拠はないとされています。一方、CBT-Iは初期治療として強く推奨されています。
日本では処方薬として用途が限られる
日本で承認されているメラトニン製剤「メラトベル」は処方箋医薬品です。PMDAの審査報告書では、小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善を効能・効果とし、通常は就寝前に1日1回1mgを投与するとされています。
製造販売元の製品情報では、顆粒剤は2020年、錠剤は2025年に承認された処方薬として掲載されています。いずれもメラトニンを有効成分とし、錠剤には1mgと2mgがあります。
米国ではメラトニンがサプリメントとして市販されています。今回の研究は長期使用と心血管系の転帰との関連を調べています。











