静岡の農地で被害が増加
静岡県内では、防霜ファンの銅線や農業用水路のグレーチングなど、農地や農業施設で金属盗難が相次いでいます。県警は2026年1月から8月末までの被害を約90件とみており、前年の年間件数をすでに上回りました。防霜ファンを使わない時期に被害が増えることも懸念されています。
県西部の茶園では、防霜ファンに使う銅線3本のうち、太い2本が約100メートルにわたって盗まれました。被害に遭った生産者の一人は修繕費を負担できず、設備を盗まれたままにしています。生産者からは、修繕費による経済的損失に加え、耕作意欲を失うほどの精神的負担も語られています。
銅価格の上昇は、盗難品の換金価値に関わる背景の一つです。数年前は1キログラム数百円だった銅が、2023年には1,000円を超え、その後も上昇が続いているとされています。JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)は、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及に伴い、銅の需要が拡大していると説明しています。
銅需要の拡大と供給の課題
銅は電気を通しやすく、送電線や発電設備などに使われます。JOGMECによると、洋上風力発電では発電機のモーターや変圧器、送電線などに銅を用い、設備容量1メガワットあたり約11.5トンが必要です。EV1台あたりの銅使用量は約80キログラムで、ガソリン車の約4倍とされています。
JOGMECは、国際エネルギー機関(IEA)の予測として、2050年までに太陽光発電容量が現在の約20倍、風力発電が約11倍になる見通しを紹介しています。需要の増加に供給が追いつかなくなる懸念があり、銅鉱山の開発や安定供給が課題になっています。日本の製錬所が処理する銅精鉱は海外に依存しており、JOGMECはリサイクルで供給を補う取り組みも必要だとしています。
農地に設置される太陽光発電設備では、防霜ファンより太い銅線が使われ、盗難に遭うケースが多いとされています。浜松市のセーフティーは、地下に埋設したケーブルへ凝固剤を注入して固定し、抜きにくくする方法を開発しました。同社代表の志村浩さんは、この方法で犯行を思いとどまらせたいと話しています。
買受業者に課される届出と確認
金属盗対策法は、盗難品の流通を抑えるため、特定金属くずを買い受ける事業者を届出制としています。高知県警によると、現時点で同法の「特定金属」に当たるのは銅で、銅を主とする金属くずが対象です。買受業者は営業所ごとに、所在地を管轄する警察署を経由して公安委員会へ届け出ます。既存業者には2026年8月31日までの猶予期間が設けられています。
買い受けの際には、相手の氏名や住所などを確認し、取引内容を記録する義務があります。大阪府警は、相手確認記録と取引記録を作成して3年間保存すること、盗品の疑いがあれば警察官へ申告することを挙げています。届出後は営業所に氏名または名称、届出先の公安委員会、届出番号を表示する必要があります。
大阪府警によると、無届営業や名義貸しには、6カ月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が定められています。営業停止命令に違反した場合は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方の対象です。公安委員会による報告徴収や立入検査、指示、営業停止命令といった行政措置も規定されています。
設備と地域の見守りを組み合わせる
浜松市認定農業者協議会は、防犯カメラやセンサーライトの設置、注意看板やのぼりの掲示、倉庫の施錠を対策例に挙げています。農業用機械は農地に放置せず、鍵を持ち帰り、施錠できる倉庫に保管するよう呼びかけています。倉庫のシャッター前や敷地の入り口付近にトラックなどを置く方法も示しています。
地域での対応として、同協議会は防犯対策中であることをのぼりや車両ステッカーで示し、不審者や不審車両を見かけたら警察へ通報するよう勧めています。茨城県下妻市は、耕作地や土地改良施設で不審者・不審車両を見かけた際の警察への通報と、被害発生時の被害届を案内しています。農業用水の給水バルブについては、プラスチック製への交換や、使わない時期に取り外して保管する方法も紹介しています。
静岡県農業経営士協会は、現場の防止策を強めるよう県に要請しました。県は地元自治体や警察と連携して対策に取り組むとしており、同協会副会長で茶生産者の西村哲さんは、生産者、行政、警察などが一体となる必要性を訴えています。










