3D printer EAC (close-up)
写真: ESA / CC BY-SA 3.0 igo / Wikimedia Commons

寝室での長時間稼働を避ける理由

フィラメント式3Dプリンターは、樹脂を加熱して造形する間、目に見える煙がなくても超微粒子や揮発性有機化合物(VOC)を放出します。超微粒子は呼吸器の奥まで届く可能性があり、一部のガスは吸入による健康影響が懸念されています。

造形には数時間かかることがあり、稼働中の機械のそばに長くいると、排出物を含む空気にさらされる時間も延びます。このため、就寝中に寝室で印刷する使い方は避けるのが望ましいとされています。

NIOSH(米国国立労働安全衛生研究所)は、メイカースペースや学校、図書館、小規模事業者向けに、3D印刷の排出物や安全上のリスクを扱うガイドをまとめています。家庭で使う場合も、プリンターの置き場所と稼働中に人が過ごす場所を考える必要があります。

PLAも排出物がゼロではない

PLAは、ABSより粒子の放出が少ないことがある素材として紹介されています。ただし、PLAも加熱中に粒子やガスを放出するため、選ぶだけで排出への対策が不要になるわけではありません。

17種類の市販フィラメントを調べた2026年の試験では、ABSは従来型PLAより多くの粒子を放出し、排出量はブランドによっても異なりました。ノズル温度や添加物も排出の状況に関係します。

PLAとABSのプリンター排出物に人の気道細胞を曝露させた実験では、炎症や細胞ストレスに関連する変化が観察されました。一方、この実験は研究室で行われており、家庭での長期曝露の影響や、寝室で安全といえる曝露量を定めたものではありません。

加熱された樹脂から粒子が生じる仕組み

フィラメント式の造形では、樹脂を半液状になるまで加熱し、ノズルから層状に押し出します。2018年の研究は、家庭向けの溶融積層方式プリンターを試験室で稼働させ、直径7ナノメートルから25マイクロメートルの粒子を測定しました。

研究者らのモデルでは、加熱されたフィラメントから未知の半揮発性物質が放出され、それが核となって粒子が生じます。その後、放出された蒸気が粒子に凝縮し、粒子同士が凝集する過程が、ノズル近くの小さな空間で進むと説明されています。

モデルでは、蒸気の発生量はノズルの押出温度と関係し、フィラメントの素材やブランドによる違いも粒子濃度の差に関わりました。VOCの種類も素材に関連し、同研究が挙げた主な例では、ABSからスチレンなど、PLAからラクチドなどが放出されます。

換気と発生源対策を組み合わせる

NIOSHは、屋外へ排気できる換気設備のある別室や作業場を、寝室より適した設置場所として挙げています。ガレージも候補ですが、適切な換気に加え、温度や湿度の変動で造形に支障が出ないことが条件です。

在宅勤務の部屋に置く場合は、プリンターを囲い、排気ダクトで屋外へ導く方法があります。開いた窓は外気を取り込めても、排出された粒子やガスを確実に取り除けるとは限りません。また、機械から距離を取るだけでは換気の代わりになりません。

HEPAフィルターは粒子を捕集し、活性炭は十分な量があれば一部のVOCを除去できますが、フィルターだけで換気の悪い部屋が安全になるわけではありません。囲い、屋外への排気、交換用フィルターには費用もかかります。設置場所を確保できない場合は、印刷サービスを利用する選択肢もあります。

NIOSHは、稼働中にプリンターのそばで過ごす時間を減らし、排出物を発生源の近くで捕集するよう勧めています。また、プリンターを燃えやすい物から離し、設置場所に火災検知器を用意することも推奨しています。