加齢による造血幹細胞生着不全の機序を解明 骨髄代謝・血流 ... Tohoku University https://www.life.med.tohoku.ac.jp › newsroom › press
出典: life.med.tohoku.ac.jp

血液の前駆細胞を神経幹細胞へ変換

ボン大学とボン大学病院などの研究チームは、80歳の人から採取した血液の前駆細胞を神経幹細胞へ直接変換しました。得られた細胞のエピジェネティック年齢は20歳未満と測定され、細胞の種類を変える過程で分子レベルの若返りも起きました。

エピジェネティック年齢は、DNAの情報そのものではなく、DNAに加わる修飾などから細胞の年齢を推定する指標です。研究チームは、変換後の細胞でこの指標が大きくリセットされ、若い細胞のように振る舞うことも確認しました。

神経幹細胞は、神経細胞などへ分化できる細胞です。今回作られたのは成熟した神経細胞ではなく、その前段階にあたる神経幹細胞です。研究成果は学術誌「Aging Cell」に掲載されました。

多能性幹細胞を経由せず、変化を追跡

細胞を別の種類へ変える従来の方法の一つでは、まず多能性幹細胞へ戻します。多能性幹細胞は、体のさまざまな細胞へ分化できる状態です。今回の方法ではこの段階を経ず、血液の前駆細胞を神経幹細胞へ直接変換しました。

ボン大学の研究チームによると、この方法では若返りは急速に起きず、徐々に進みました。細胞の変化を100日を超える期間にわたって追跡でき、エピジェネティック時計が数週間かけてリセットされる過程を調べられます。

研究チームは、この時間をかけた変化を、若返りを左右する要因や物質を調べる実験モデルと位置づけています。細胞の年齢指標が変わる過程を観察することで、どの要因が変化を速めたり遅らせたりするかを検討できます。

転写因子が細胞の進路を切り替える

直接リプログラミングでは、転写因子と呼ばれるタンパク質を細胞に働かせ、読み取られる遺伝子の組み合わせを変えます。ボン大学の研究チームは、複数の転写因子を使って血液の前駆細胞を神経幹細胞へ導きました。

別の仕組みを調べたホワイトヘッド研究所のマウス細胞研究では、皮膚細胞などに転写因子を一時的に働かせ、神経幹細胞に関わる遺伝子の活動を促しました。研究チームは、神経幹細胞を選択する培養条件を使った後、転写因子を働かせる薬剤を取り除いても、細胞が神経幹細胞の性質を保つ方法を示しました。

同研究では、肝細胞やBリンパ球からも神経幹細胞を作りました。また、Bリンパ球由来の細胞が、元の細胞に由来する遺伝的な目印を保ちながら神経幹細胞の特徴を持つことを確かめました。これは細胞の進路を切り替える仕組みを調べたマウス研究であり、ボン大学のヒト細胞研究とは対象や実験が異なります。

加齢研究に生かす際の利点と違い

多能性幹細胞を経由する方法では、細胞のエピジェネティックな年齢の特徴がリセットされ、その後に神経細胞へ分化させても戻らない場合があります。加齢に伴う性質を持つ神経細胞モデルを作る場合、この若返りは病気の特徴を再現するうえで課題になり得ます。

一方、体細胞から神経細胞へ直接変換する方法では、元の細胞の年齢やエピジェネティックな特徴が保たれる可能性があり、加齢に関わる神経疾患の研究に役立つとされています。この方法では、病気の仕組みを調べる際に、年齢に伴う細胞の特徴も検討できます。

ボン大学の方法では多能性幹細胞を経由せず、細胞の年齢指標が段階的に若返る過程を捉えます。加齢した状態をそのまま再現するモデルとは異なり、細胞の若返りが進む仕組みを調べます。