ASML、2026年売上高予想を引き上げ 2029〜30年分の装置受注にも関心
出典: asml.com

ASML、2026年の売上高予想を引き上げ

ASMLは2026年7〜9月期に純利益49億6000万ユーロを計上し、市場予想の41億ユーロを上回りました。売上高は116億6000万ユーロで、予想の117億2000万ユーロをわずかに下回っています。通期の純売上高予想は下限を従来の430億ユーロから440億ユーロに引き上げ、440億〜450億ユーロとしました。

10〜12月期の売上高は142億〜152億ユーロを見込んでいます。ASMLは、2027年と2028年に予定する装置供給では顧客需要を満たせないと説明し、2028年の生産能力を従来計画より増やす方法を検討しています。

同社のクリストフ・フーケ最高経営責任者(CEO)は、顧客が人工知能(AI)関連投資の規模と期間を踏まえ、短期・中期の装置需要予測を引き上げていると述べました。一部顧客は2029年や2030年の装置注文にも関心を示しています。

先端チップの回路を転写するEUV

極端紫外線(EUV)リソグラフィは、光で回路パターンを半導体ウェハー上の感光材に転写する技術です。感光材にできた像を化学処理し、回路の形を作ります。EUV装置は波長13.5ナノメートルの光を使い、より微細なパターンが必要な先端ロジックやメモリーの層を加工します。

ASMLのEUV光源は、液体スズの液滴にレーザーを当ててプラズマを作り、光を発生させます。EUV光は空気やガラスに吸収されるため、光の通り道は真空に保たれ、レンズの代わりに反射鏡を使います。マスク(回路パターンを載せた原版)も透過型ではなく反射型です。

従来型の深紫外線(DUV)装置は波長193ナノメートルの光を使い、現在も多くの製造工程で使われています。EUVはすべての層を加工する装置ではなく、微細化が特に必要な層に使われます。ASMLはEUV露光装置を製造する唯一の企業で、装置の供給能力は先端チップの生産計画にも関わります。

High NAは解像度を高める次世代装置

High NA EUVは、従来のEUV装置より高い開口数(NA)を使う方式です。NAは光学系が光を集める能力を表し、ASMLの従来型NXEでは0.33、新型EXEでは0.55です。波長13.5ナノメートルは共通で、解像度は従来型の約13ナノメートルからHigh NAの約8ナノメートルへ高まります。

EXEの光学系は、パターンを一方向に4倍、もう一方向に8倍縮小する非対称の設計です。この方式でマスクに光が当たる角度を抑え、従来と同じサイズのマスクを使えるようにしています。High NA装置の露光範囲はNXEの半分で、ウェハー1枚に必要な露光回数が増える設計です。

露光回数の増加に対応するため、EXEではウェハーとマスクを動かすステージを高速化しています。ASMLはEXE:5000の処理能力を毎時185枚超とし、2025年に毎時220枚へ引き上げる計画を示していました。また、ASMLは2023年にEXE:5200Bの目標処理能力を毎時220枚と発表しました。

SamsungとTSMCもHigh NAを採用

2026年7〜9月期には、SamsungとTSMCがASMLのHigh NA EUV装置を使うことを約束しました。両社は世界最大手の半導体メーカーです。

High NA装置の採用には、解像度だけでなく製造工程の組み立ても関わります。ASMLは、より小さな回路を印刷することで、従来は解像度の制約を補うために必要だった複雑な工程を簡素化できると説明しています。同社はEXEを既存EUV技術の延長と位置づけ、モジュール単位で試験してから組み立てる方式を採っています。

High NA装置には、従来型EUVと共通する主要部品が8つ中5つあります。

中国向け販売見通しと輸出規制

ASMLは、中国向け売上高が事業全体の20%を占めるとの見通しを維持しました。EUV装置は中国へ輸出できず、一部のDUV装置も輸出規制の対象です。オランダは2024年、DUV装置の一部機種について、中国向け販売に加え、既に納入した装置の保守や部品・ソフトウェア提供にも許可を求めました。

2026年8月時点では、米議会で超党派のMATCH法案が審議されていました。法案はASMLによる中国向けDUV装置の販売と、納入済み装置の保守を禁じる内容で、オランダが実施しない場合の制裁も盛り込んでいます。米国はオランダに対し、DUVを含む半導体製造装置の中国向け販売をさらに制限するよう圧力をかけています。

2024年に許可制となった対象には、DUV装置の1970iと1980iが含まれ、既に中国へ設置された装置のサービスにも許可が必要とされました。一方、MATCH法案は既存規制を越えて、より広いDUV販売と保守の禁止を目指しています。ASMLは中国売上高の見通しを据え置いていますが、輸出規制を巡る動きは装置販売とサービスの双方に及んでいます。