
AIを使った攻撃が複数組織に拡大
中国政府と連携する攻撃者Storm-0940は、侵入テスト用のAIエージェント基盤「ARTEX」を使い、ConnectWiseの複数顧客が利用するアプリの認証情報を悪用しました。攻撃者は2,250を超えるMicrosoft 365テナントへのサインインを試み、一部では標的の選定から3時間以内にクラウド環境の管理者権限を得ました。
侵害されたのは、複数顧客の環境に接続するConnectWiseのアプリ認証情報です。これらを使うと、利用者がその場でサインインしなくても、アプリとしてテナントにアクセスできます。Microsoftは、この活動は自社のシステムや製品の侵害、脆弱性によるものではないと説明しています。
Storm-0940は2021年から活動する中国政府と連携した攻撃者です。2026年9月ごろから複数の業界を標的にした攻撃でARTEXが使われました。今回挙げられた標的には、航空宇宙・防衛、半導体、政府機関、シンクタンクなどが含まれます。
パスワード攻撃は失敗、アプリ認証情報は悪用
Microsoftが観測したパスワードスプレー攻撃では、8組織の327アカウントに対し、15万1,000件を超えるログイン失敗が発生しました。10月11日には1分あたり2,900件に達しましたが、認証に成功した試行はありませんでした。
一方、攻撃者はConnectWiseのクラウドアプリの認証情報を使って顧客テナントにアクセスしました。Microsoft Graphを通じた偵察やアプリ認証情報の変更のほか、ID、グループ、権限ロールの変更も確認されています。
一部では、アプリが自らに最高位の管理者ロールを割り当てたり、2028年に期限を迎える新しい秘密鍵を設置したりする動きがありました。Microsoftは、アプリによる認証やサインインが成功しても、それだけで顧客データが閲覧・持ち出されたとは限らないとしています。
ARTEXが担った自動化
ARTEXは、さまざまなAIモデルを利用できるオープンソースの侵入テスト用フレームワークです。偵察、パスワードスプレー、OAuthアプリの悪用を自動化し、今回の攻撃では顧客環境へのサインインを加速させました。
ARTEXでは、LLM(大規模言語モデル)を使う複数のエージェントが侵入テストを進めます。エージェントは偵察からデータ窃取までを自律的に実行し、人間の介入を抑える設計です。
発見した資産や脆弱性をグラフ状に蓄積し、後続の作業に活用します。Microsoftは、エージェントが昼夜を問わず複数の侵入経路を同時に試せることが、攻撃の速度と規模を高めた要因だと説明しています。今回は自動化により、認証情報を得た後のテナントへのアクセスや権限変更も短時間で進みました。
ConnectWiseは段階的にサービスを復旧
ConnectWiseはCloud Backup(旧SkyKick)に関連するアプリ認証情報への不正アクセスを確認し、影響を受けたアプリ接続を停止しました。10月23日の更新では、復旧環境のテストとセキュリティ検証を週末までに完了する見込みで、検証に成功すれば機能を段階的に戻すとしています。
既存バックアップからデータを復元する機能は、復旧テスト後の翌週初めに利用可能にする見通しです。サービスへの再登録は、その後段階的に進める予定です。
ConnectWiseは、正式な案内が届くまで、影響を受けたアプリ接続を無効にしておくよう求めています。Microsoftも、各組織に対し、サービスプリンシパルのサインイン、アプリ認証情報や権限の変更、Microsoft Graphの活動を調べるよう案内しています。










