
米Palantirの元幹部2人が立ち上げたDreamは、建物の設計とエンジニアリングを自動化するAIを開発し、シードラウンドで1,700万ドル(約27億円)を調達しました。建物の外観を描くだけでなく、構造や設備、建築基準を考慮した設計を目指しています。同社のモデルは米国の許可記録にある建物データを学習に使い、テキサス州とカリフォルニア州の10件のプロジェクトで稼働しています。
建物の構造や設備まで扱うAI
Dreamを創業したアンディ・エルダー氏とアルジュン・マトゥール氏は、スタンフォード大学でコンピューターサイエンスを学び、約10年間Palantirに勤務しました。エルダー氏は米国の防衛・情報機関向けソフトウェアを開発する800人規模のチームで製品設計を率い、マトゥール氏は同社の商業部門で上級副社長を務めました。
Dreamが開発する「built world model」は、物理的に構築された空間の形状や制約、物体同士の関係を扱うAIモデルです。Dreamは、一般的な大規模言語モデルが建物の画像を生成できても、それだけでは構造的に成立する設計にならないと説明しています。同社のモデルは、米国内の建築許可記録から集めた1億平方フィート超の建物データで学習しています。
Dreamは、配管や空調設備、梁の材料、支えられる荷重など、壁の内側にある要素も設計対象に含めます。同社は、建物を構成する要素や複雑な設備が空間内でどう組み合わさるかを推論する能力を「structural cognition」と呼んでいます。商業施設向けには、配置から構造、建築設備までを扱い、施工会社が使える図面一式を作ることを目指しています。
既存の設計ソフトと異なる設計範囲
建築・エンジニアリング・建設業界では、AutoCADが2次元の図面作成や詳細な製図に使われ、Revitは建築、構造、設備を統合した3次元モデルを扱うBIMソフトとして利用されています。BIMは建物の設計、建設、運用に関する情報を結び付け、建物の3次元モデルを作る手法です。Revitでは、そのモデルをもとに図面や文書を作成できます。
Dreamは、既存の設計ソフトを置き換えることを目標に掲げています。創業者は、従来の設計作業では専門家がソフト上で設計要素を一つずつ描いていると述べ、Dreamのモデルは建物全体を設計すると説明しました。同社の製品は、設計案の作成に加え、全体コストの見積もりにも使われています。
Dreamは、候補となる設計を数分で生成し、建築基準に照らしてチェックするとしています。1つの店舗や飲食店の設計案を複数の場所に合わせて調整し、各敷地で配置や構造、基準を再確認する機能も掲げています。データセンターでは構造、電力、冷却設備などを連携させ、ある設備の変更を他の設備と照合する仕組みを説明しています。
見た目の再現と施工可能性を分ける評価
建物を生成するAIでは、見た目の自然さだけでは施工に必要な条件を満たすか判断できません。Salesforce AI Researchの研究者らが公表したDreamHouseは、木造住宅の構造生成を評価するベンチマークで、幾何、構造、施工可能性、法規への適合を同時に検証します。この評価では、画面上で自然に見えるかどうかと、実際に組み立てられる構造かどうかを別々の基準で判定します。
DreamHouseは、13種類の建築様式を含む2万6,000棟超の構造モデルと、10項目の決定論的な構造検証テストで構成されています。評価対象のモデルは、建物の途中段階を確認しながら施工手順を生成し、構造上のフィードバックを受けて修正します。研究では、評価した最も高性能なモデルでも、構造の妥当性と視覚的な忠実さを同時に満たした割合は7.1%でした。
Dreamのbuilt world modelも、建物の外観だけでなく、構造や設備を含む空間を扱います。ただし、DreamHouseは木造住宅を対象とした研究用の評価基準であり、Dreamの製品そのものを評価した結果ではありません。両者は、見た目の生成にとどまらず、物理的な条件を満たす設計を扱う点で共通しています。
調達資金と商用プロジェクト
DreamのシードラウンドはAndreessen Horowitz(a16z)が主導し、SV Angel、XYZ、Zigg Capitalなども参加しました。同社はすでに建築・エンジニアリング・建設業界の専門家や開発事業者に製品を販売しています。稼働中のプロジェクトはテキサス州とカリフォルニア州にまたがる10件です。
Dreamが最初に対象とするのは、店舗、オフィス、データセンターなどの商業建築です。同社は、間取りから構造や設備を経て施工図面を作る工程を自動化し、従来は1つの設計に1年以上かかる作業を数分で進めるとしています。顧客には、施工会社が使える図面一式を提供する方針です。
建築設計向けAIを開発する企業には、Motif、Snaptrude、Arcolもあります。a16zのパートナー、キンバリー・タン氏はDreamの技術的な進捗を評価し、独自モデルに基づくアプローチを見たことがないと述べました。Dreamが掲げる設計自動化では、建物の構造や設備を含む図面を扱う段階まで製品を広げられるかが焦点になります。











