
Dropboxは、AI向けクラウドストレージを手がけるTigris Dataを3億5,000万ドル(約550億円)で買収する計画を発表しました。また、企業や開発者向けのストレージ基盤「DBX Agent Cloud」と、Dropbox内のファイルをAIで扱う機能も発表しました。買収完了は2026年第4四半期を見込んでいます。
Tigris買収とDBX Agent Cloud
Tigrisは、複数のクラウドにまたがるデータの保存とアクセスを支援する、S3互換のオブジェクトストレージを提供しています。オブジェクトストレージは、画像や動画、学習データなどをオブジェクト単位で保存する方式です。Dropboxはこの買収を通じて、AIアプリケーションやエージェントを開発する企業・開発者向けのインフラ事業を広げます。
DBX Agent Cloudは、まず単体で購入できるオブジェクトストレージとして提供され、Amazon S3向けのツールやアプリケーションと組み合わせて使える設計です。Amazon S3は、クラウド上で大量のデータを保存・取得するサービスです。Dropboxは今後、文書・画像・音声・動画をAIが扱うためのコンテンツ処理機能と、エージェントがファイルを管理して作業を継続できるファイルシステム機能を追加する計画です。
買収額は3億5,000万ドル(約550億円)で、Dropboxにとってこれまでで最大の買収となる見通しです。Dropboxは昨年、AI関連企業のReclaim.ai、Promoted.ai、Mobius Labsも買収しています。今回の買収では、Tigrisのストレージ技術を取り込み、Dropboxが培ったストレージ運用の経験をAI基盤に活用します。
S3互換で既存ツールを利用
S3互換とは、Amazon S3向けに作られたAPI(ソフトウェアからサービスを操作するための仕組み)に対応し、既存のクライアントやアプリケーションからデータを扱えるようにする方式です。さくらのクラウドのオブジェクトストレージでは、S3互換APIに専用のアクセスキーを使い、作成済みバケットやオブジェクトを操作します。バケットは、オブジェクトをまとめて管理する入れ物です。
既存のAmazon S3向けツールを使えるのは、ストレージが共通のAPI操作を受け付けるためです。さくらのクラウドでは、オブジェクトの一覧取得、アップロード、ダウンロード、削除などをS3互換APIで実行できます。アプリケーション側は接続先のエンドポイントや認証情報を設定し、同じ種類の操作を実行できます。
さくらのナレッジの実例では、AWS SDK for JavaScriptを使い、接続先URL、リージョン、バケット名、アクセスキーを設定してオブジェクトストレージを操作します。サンプルには、オブジェクトの一覧表示、取得、アップロード、削除が含まれます。DropboxのDBX Agent Cloudも、S3向けツールや対応アプリケーションとの併用を想定しており、既存の開発環境から利用できます。
Tigrisのデータ配置方式
Tigrisは、データへのアクセス元に近い場所へオブジェクトを配置し、アクセス状況に応じて保存先を移す仕組みを備えています。グローバル設定では、アップロード元に近い地域へデータを保存し、別の地域からアクセスされると、その地域にローカルコピーを作成します。利用頻度の変化に応じて、データの配置も移動します。
Tigrisでは、利用者がバケット作成時に保存場所の種類を選べます。複数地域の設定では選んだ地域区分内に複製し、デュアルリージョンでは指定した2地域にデータを置きます。単一地域の設定では、1地域内の複数の可用性ゾーンに冗長化します。
Tigrisは、データの複製やキャッシュを利用者が個別に管理する手間を減らす設計です。AWS S3やGoogle Cloud Storage向けのSDKにTigrisの認証情報と接続先を設定すれば、多くの場合、アプリケーションのコードを変更せずに切り替えられます。DropboxはDBX Agent Cloudを既存のクラウドや計算基盤と併用できる構想を示しており、Tigrisの配置技術をそのストレージ基盤に活用します。
Dropbox本体のAI機能と提供予定
Dropbox内のAI機能では、利用者の依頼に応じて、関連ファイルの検索やフォルダーの要約、文書の下書き、PDFや画像の編集、録音の文字起こしなどを行えます。ファイル変更を伴う操作では、実行前に計画を表示して承認を求めます。変更履歴を確認でき、対応する操作は取り消せます。操作は既存の権限や共有の仕組みに沿って行われます。
利用者はDropbox内で対応するAIモデルを選び、ChatGPT、Claude、Museなどの対応ツールからDropboxのファイルを扱えます。Dropboxの内容を繰り返しアップロードせずに作業でき、生成した成果物をDropboxへ戻す機能もあります。更新された体験はすでに7万を超えるチームへ展開され、初期提供の対象は米国、英国、オーストラリアの対象StandardおよびAdvancedチームです。
Dropboxは、より広い地域への提供を2027年に予定しています。買収に伴う人員削減の予定はないとDropboxは述べています。











