
暗号資産をオフラインで管理するハードウェアウォレットのメーカー、FoundationとKeystoneで、顧客情報や運用システムに関わるセキュリティ侵害が明らかになりました。Foundationでは正規ドメインを装った詐欺メールが送られ、Keystoneは端末の真正性確認に使う鍵が流出したため、在庫端末18,835台を廃棄する方針です。
Foundationでは顧客情報を使った詐欺メール
Foundationの顧客には、同社の公式ドメインから届いたように見える偽の端末リコール通知が送られました。メールは、ディスプレイ部品が改変され、対象端末の資金が盗まれていると警告していました。一方、同社はPassport端末と端末内の資金は安全だと告知しました。
同社は侵害されたCloudflareのAPIキーを失効させ、メールに記載された悪質なドメインを停止しました。共同創業者兼CEOのザック・ハーバート氏は、自社のバックエンド基盤の一部が侵害され、攻撃者がサポート窓口にアクセスして正規のように見えるメールを送った可能性があると説明しています。
一部のメールには氏名や住所、電話番号などが含まれていました。Foundationは、サポート窓口の情報や過去の注文記録などが使われた可能性を挙げています。過去のWooCommerceストアでは、注文情報を60日後に自動で匿名化する設定でした。しかし、データベース移行後も旧テーブルに記録が残り、管理画面から把握できない状態だったと同社は説明しました。
Keystoneは認証鍵を含む端末を廃棄
Keystoneは10月20日に公式サイトへの不正アクセスを検知し、購入者の氏名、連絡先、配送先住所、注文内容や価格が流出したと公表しました。調査によると、攻撃者はサイトで使われていた外部のデータ監視ツールの脆弱性を悪用し、権限を拡大しました。
侵害された情報には、端末が正規品かを認証ページで確かめるWebAuth鍵も含まれていました。この鍵は製造時に端末へ書き込まれ、消去や書き換えができません。Keystoneは、旧鍵を含む在庫端末18,835台を販売・出荷せず、廃棄するとしています。
個人情報を保持していた購入記録は25,964件で、対象期間は2024年から2026年です。Shopifyの購入者記録51,083件のうち、25,000件超は不正アクセス前に情報が消去または匿名化されていました。また、氏名や連絡先、住所を含む未払いのチェックアウト記録12,873件も特定されました。
Keystoneの180日間の削除方針は、記録を一括消去する自動ツールが安定して動かず、一部の処理失敗を検知できなかったため徹底されていませんでした。10月20日より前に届いた端末は通常の手順で認証できます。それ以降に届いた旧鍵搭載端末は、認証ページを通過しても偽造品の可能性を完全には排除できないとして、Keystoneは個別確認を案内しています。
秘密鍵を隔離しても、製造と認証は別の課題
ハードウェアウォレットは、端末内に秘密鍵を保管し、取引の署名を端末内で行います。取引を作るソフトウェアが内容を端末へ送り、利用者が承認すると端末が署名を返します。秘密鍵そのものは端末の外へ出ません。
初回利用時には、端末が秘密鍵のもとになるシードを生成します。シードも端末外へ出ない設計です。ただし、鍵を隔離する仕組みでは、製造や流通の段階で端末に不正な部品が加えられるリスクや、顧客情報を扱うウェブサイト・サポート基盤への侵入を防げません。今回の2社の事案では、端末内の秘密鍵ではなく、顧客情報や運用基盤、認証の仕組みが侵害されました。
ハードウェアセキュリティトークンの真正性確認を調べた研究では、194人の調査参加者の回答から、利用者が必要な確認をしなかったり、確認方法を知らなかったりする場合があると報告されました。研究は、既存の認証確認だけでは流通過程の攻撃すべてを防げず、その有効性が利用者に正しく理解されないことも課題に挙げています。Keystoneの認証鍵流出は、端末の確認手段を運用する側の鍵が侵害されると、確認結果への信頼にも影響し得る事例です。
真正性確認は端末の改変すべてを検出するとは限らない
Ledgerの真正性確認では、端末のセキュアエレメントがサーバーから届いたランダムな要求に署名し、サーバーがその署名と製造時に登録された情報を検証します。検証に成功すれば正規のセキュアエレメントとして認証され、失敗すれば接続が止められます。
この確認は、偽造端末が正規品として通過するのを防ぐためのものです。一方、Ledgerは、正規のセキュアエレメントを残したまま不正な部品を追加するような物理改変は、真正性確認だけでは検出できないと説明しています。Keystoneで流出したWebAuth鍵も、端末が正規品かどうかを判定する仕組みに使われ、秘密鍵を端末内に保管する機能とは別の役割を担います。
ハードウェアウォレットは、インターネットに接続したパソコンなどから秘密鍵を隔離し、端末側の侵害リスクを抑える設計です。しかし、Foundationでは顧客情報を扱う基盤が、Keystoneではウェブサイトと端末認証の運用が攻撃対象になりました。










