
GAZOO Racingと安川電機は、AIを活用した自律型ロボット溶接技術を共同開発し、2026年9月に「蒲郡GRカート工房」へ導入しました。ロボットは溶接に加え、仕上がりの確認と補正も担い、GRカートのフレーム製造に使われています。
GRカートのフレーム製造に導入
今回の技術は、モータースポーツの現場で培ったアーク溶接技術「SFA工法」の知見を生かして開発されました。SFA工法は、金属をアークで溶かして接合する工程を制御する技術です。
導入先は、入門用レーシングカート「GR KART」のフレーム製造工程です。安川電機の産業用ロボット「MOTOMAN NEXT」は、フレームパイプの隙間や温度などを認識・判断しながら溶接します。
ロボットは溶接後の品質確認と補正まで自律的に行います。この技術はGRカートのフレーム製造で実用化され、原価低減に寄与しています。
SFA工法で溶接時間を短縮
開発のきっかけは、2023年にフィンランドのTGR-WRTを訪れた豊田章男氏が、ロールケージの製作に2~3週間かかるという現場の課題を知ったことでした。ロールケージは競技車両の車内に組み込むフレームです。
GRと安川電機は2024年にSFA工法を開発しました。この工法を使うと、ロールケージの製作期間は3日まで短縮されます。スーパー耐久シリーズの参戦車両にも導入されています。
SFA工法では、ロボットは溶接を連続して進めず、間隔を空けてゆっくり行います。熱が蓄積しにくくなり、溶接時のひずみを抑えられます。
溶接部は従来の方法に比べて約25%軽量化され、溶接強度は約10~25%向上したとされています。溶接のたびに金属を凝固させる制御により、溶接金属が垂れにくくなり、上向きの溶接や2~3ミリの隙間の溶接も可能になりました。
周囲を認識し、作業を組み立てるロボット
MOTOMAN NEXTは、センサーが捉えた周囲の状況や位置情報をもとに動作を計画し、実行する仕組みを備えています。ロボット本体の制御機能に加えて、自律制御ユニットを搭載しています。
作業中の状態を自ら確認し、状況に応じた方法で作業を完了する機能も備えています。今回の溶接工程では、パイプの隙間や温度に応じた溶接と、その後の品質確認・補正に、この認識・判断の仕組みを用いています。
安川電機はMOTOMAN NEXTの販売を2023年12月に開始し、可搬質量4、7、10、20、35キログラムの5機種を順次発売しました。周囲の状況を把握して判断や計画を行う機能を備え、あらかじめ定めた動作だけで作業を進める従来型の自動化とは異なる構成です。
工程で品質をつくり込む「自働化」
トヨタにおける「自働化」は、機械を動かすだけの自動化ではなく、異常を検知して不良品を次の工程へ流さず、工程内で品質をつくり込む考え方です。
今回の取り組みは、この考え方を引き継ぎ、ロボットが状況を認識・判断して必要な修正まで行う「自律化」を目指しています。溶接後の確認と補正を工程に含め、製造作業の一部をロボットが完結させます。
GRはモータースポーツの現場で得た知見を、車両だけでなく「つくる技術」にも生かす方針です。安川電機とGRは、現場で実践を重ねながら技術を磨いていくとしています。











