
KDDIと日本郵便は、石川県珠洲市の珠洲郵便局を拠点に、複数のドローンを遠隔運航する実証を2026年9月28日から10月4日まで実施しました。平時の通学路の安全確認と、災害時の被害・配送ルートの状況把握に同じ設備を活用できるかを検証しました。10月1日に公開した運航では、郵便局と近隣の消防署から計2機を同時に飛ばし、海側と山側の状況を確認しました。
郵便局と消防署から海側・山側を同時に確認
両社は珠洲郵便局の屋上に、ドローンの離着陸や充電の拠点となる「Skydio Dock for X10」を1台設置し、市内の既存のドローンポートと連携させました。複数機で監視・点検の範囲を広げ、被災状況や住民の安否を迅速に把握できるかを検証しました。
公開した運航では、郵便局から出発した機体が沿岸部や津波発生時の注意喚起の状況を確認しました。消防署から出発した機体は山側を飛行し、土砂崩れや台風の被害、ため池、津波の発生状況を確認しました。両社は、災害などで道路が寸断された場合を想定し、配送ルートの把握を集配社員の安全確保に活用できるかも検証しました。
消防署側の機体には、地図上にマーカーを置く機能と赤外線カメラが搭載されています。マーカーの位置情報とカメラ映像の切り抜きを外部へ送信でき、赤外線カメラは夜間の人や鳥獣の発見などに使えます。鳥獣への対応では、関係者が現場に着く前に情報を共有し、対応を検討する使い方が想定されています。
離着陸と充電を自動化し、拠点から遠隔運航
実証に使用した「Skydio X10」は、米国Skydioが開発した自律飛行型ドローンです。機体上でAI処理を行うエッジAIと6基のナビゲーションカメラを使い、周囲の障害物を自動で回避します。珠洲市の現地には操縦者を置かず、KDDIスマートドローンの拠点から制御しました。機体はWi-Fiやモバイルネットワークを通じて制御でき、搭載したスピーカーによる避難の呼びかけにも対応します。
今回設置したDock for X10は、自動の離陸・着陸、充電、データ同期を担う設備です。機体を風雨から保護し、クラウドや指令拠点のシステムにつなぐことで、現地に操縦者がいない遠隔運航を支えます。充電についてSkydioは、気温25度の条件でバッテリー残量15%から95%まで約35分かかるとしています。
遠隔運航用のソフトウェア「Ops Center」や「Skydio Command」は、ブラウザーからの機体操作、飛行計画の作成、複数拠点の機体管理に対応します。Dockには気温、風速、降水を測るセンサーがあり、操縦者はソフトウェア上で離陸地点の状況を把握できます。また、遠隔での飛行前点検や、周囲に運航を知らせる警告灯・音声による通知も備えています。
日常の見守り設備を災害時にも使う「フェーズフリー」
今回の実証が目指す「フェーズフリー」は、日常に使うモノやサービスを非常時にも役立つように設計する考え方です。フェーズフリー協会は、非常時だけ取り出す防災用品に対し、日常の生活でも使い、非常時にも活用できる商品・サービスとして説明しています。珠洲市での実証では、平時の通学路の安全確認と、災害時の被災状況や配送ルートの確認を、一つの運用モデルで担えるかを検証しました。
この考え方には、どのような状況でも利用できる「常活性」、日常から使える「日常性」、使い方や利用限界が分かりやすい「直感性」という原則があります。さらに、災害への気づきや意識を生む「触発性」、参加や普及が可能な「普及性」を合わせた5原則で構成されます。
全国の郵便局への常設化と2027年度以降の協業を検討
両社は2026年6月、「ドローンによる地域課題解決と社会基盤化の実現」に向けた基本合意書を締結しました。珠洲市での実証は、全国展開に向けた第1弾の取り組みで、10月4日の珠洲市主催「総合防災訓練」への参画も実証内容に組み込み、自治体と連携した災害時の運用モデルを検討する計画でした。
日本郵便は設置場所を提供し、郵便局業務に即した使い方の検討や地域・関係機関との連携を担います。KDDIは機体、ポート、遠隔運航システムを提供し、通信・運航環境の構築、ルート設計、安全管理、映像やデータの伝送・活用検証を担当します。
全国展開の拠点として両社が活用を検討する郵便局網は、総務省の令和5年版情報通信白書によると、2022年度末時点で2万4,251局ありました。内訳は直営郵便局が2万142局、簡易郵便局が4,109局で、直営には分室と閉鎖中の局、簡易郵便局には閉鎖中の局を含みます。両社は、地域住民との接点があり、生活圏に近い場所でサービスを提供する郵便局を、見守り、防災、物流でのドローン活用の拠点にすることを目指しています。
KDDIはドローンを1,000カ所に配置し、全国どこでも10分以内に向かえる基盤の構築を目標としています。実証時点で、ポートは能登地域に12カ所、全国に20カ所設置していました。ドローン物流では日本郵便を主体とし、KDDIが衛星通信サービス「Starlink」などの通信や遠隔運航の体制を提供する構想です。
両社は今回の実証結果を踏まえ、全国の郵便局を活用したドローンポートの常設化と、ドローン物流の実運用に向けた検討を進めます。本格的な協業の実現は2027年度以降を目指しています。











