Linux 7.3-rc6では、ドライバーやネットワークを中心に幅広い修正が入りました。Linus Torvalds氏は変更の内訳を「通常」とし、小さなエラー処理の修正が多い状況を、AI時代の「新しい通常」と表現しました。

ドライバーやネットワークを中心に修正

Phoronixによると、rc6ではGPU、ネットワーク、USB、端末、センサー、サウンドなど、複数分野のドライバーが修正されました。Torvalds氏は差分の約半分がドライバー修正だと述べ、コミット数も「新しいAI通常」の範囲だと説明しています。

具体的な変更には、Turtle Beach VelocityOne Raceのハンドルとペダルへの対応が含まれます。一方、利用者から多くの不具合報告が寄せられたため、Logitech BoltレシーバーのHID++対応は取り消されました。

ネットワーク関連では複数の修正が入り、一部の作業はAIやLLVMによるノイズの影響で遅れたとPhoronixは伝えています。Torvalds氏はほかに、KVMを中心としたアーキテクチャの更新、SMBクライアントを中心とするファイルシステムの作業、BPFや新たなセルフテストにも触れました。

リリース候補で行う修正

リリース候補(rc)は、安定版の公開に進む前に修正を確認する段階です。Linux 7.2のrc7について、XenoSpectrumはTorvalds氏の説明を紹介し、番号が進むほど安定版の判断に近づく一方、修正を取り込んで検証する期間でもあるとしています。

通常の変更にはドライバーやネットワーク、ファイルシステム、アーキテクチャなどの修正が含まれます。Linux 6.18-rc7を扱ったUbunlogも、ドライバーの調整や回帰不具合の修正を主な内容として挙げています。

同じLinux 6.18では、rc6で起きた仮想メモリーの回帰不具合が修正され、rc7では変更量が抑えられたとUbunlogは伝えました。安定版の公開を前に、修正の量だけでなく、回帰不具合が残っていないかを確かめる工程が続きます。

AIによる検出と人間の確認

Linux 7.2の開発を振り返り、XenoSpectrumによれば、Torvalds氏は複数のAIツールによるレビューが多くの修正につながったと説明しました。AIが不具合を見つけた場合も、パッチの作成、テスト、担当メンテナーによる確認を経て取り込まれます。

XenoSpectrumが紹介したLinux 7.2では、rc6に615件、rc7に500件のコミットが加わりました。ただし、これらは各リリース候補間のコミット数であり、AIが発見した問題やAI生成パッチの数を示すものではありません。

Linux 7.3-rc6についても、Torvalds氏は小さなエラー処理の修正が多いことを「新しいAI通常」と結びつけました。

メンテナーにかかるレビュー負担

Snuglabが紹介したMetrの調査では、AIツールの利用が多いチームで、平均プルリクエストレビュー時間が91%増加したとMetrが報告しました。Snuglabは、AIがパッチを作る速さに比べ、人間による確認には時間がかかるという負担を指摘しています。

Snuglabによると、AI生成の報告や重複した報告が増えると、メンテナーは内容の選別や重複対応にも時間を割くことになります。また、Linux Foundationなどによる調査として、AIツールを使った経験豊富なオープンソース開発者の作業時間が19%長くなったという数字も紹介しています。

WebProNewsは、ネットワーク開発ツリーで自動化やAIによる整理に関係するパッチが全体の3分の1から半分に達したとする、メンテナーのJakub Kicinski氏の報告を伝えました。Greg Kroah-Hartman氏は、AIを使ったファジングで問題候補を見つける一方、ステージング領域ではセキュリティ修正を除き、LLM生成パッチの多くを受け付けない運用にも触れています。

Linuxカーネルでは、AIエージェントはSigned-off-byタグを付けられず、提出者である人間がコードの確認と責任を担います。WebProNewsによれば、AIの利用を示すAssisted-byタグも導入されており、AIが検出や作業を補助しても、採用する修正を判断する工程は人間に残されています。