Mastercardの信頼できるエージェント型コマースに対するビジョン
出典: mastercard.com

Mastercardは、企業のAIエージェントがデータや計算資源などのデジタルサービスを、設定された予算と権限の範囲内で購入する仕組み「Agent Pay for Machines」を発表しました。オンラインサービスごとのアカウントやAPIキーを用意せず、必要なサービスを使った分だけ支払う構想です。AIエージェントの利用拡大に伴い、支出を誰がどこまで許可するかが決済の課題になっています。

個人向けエージェントの普及が買い物を後押し

Mastercardの製品責任者ヨルン・ランバート氏は、個人向けAIエージェントの普及によって、エージェント経由の商取引が想定より早く広がっていると述べました。同氏らは以前、MCPやACPといったエージェント間通信プロトコルが商取引の基盤になると考えていましたが、同氏はFortuneの取材で、その見方はすでに変わったと説明しています。

MetaのMuseやOpenAIのDotsのような一般消費者向け製品が、普及の裾野を広げています。Mastercardは別の取り組みとして「Agent Pay」を展開し、小売店や行政サービスでエージェントが取引できる仕組みを用意しています。

小規模事業者向けには、AIエージェントに広告キャンペーンを企画・実行させるツールも紹介されました。グラノーラバーの作り手が400ドル(約6万3,000円)の予算を設定し、広告配信に加えて画像、音楽、台本などの制作要素も調達させる例があります。

予算と権限を決めてサービスを利用

Agent Pay for Machinesは、企業がエージェントに作業と支出上限を与え、エージェントが作業の途中で必要な有料サービスを選ぶ仕組みです。Mastercardは、データ提供元、AIモデル、計算資源など、別々の提供者をまたいで使う場面を想定しています。

従来の有料デジタルサービスでは、提供者ごとにアカウント、APIキー、前払い残高、または請求関係を設けるのが一般的です。利用するサービスを作業中に選び、実際に使った分だけ支払う場合、こうした個別の手続きが障壁になります。Mastercardの仕組みは、あらかじめ定めた予算と権限の範囲を保ちながら、複数の提供者を利用する設計です。

Mastercardは、CloudflareやAnt International、AIsa、Base、BVNK、Coinbase、Hypeとの試験運用を経て、開発者向け早期アクセスを始めました。早期アクセスでは、購入側と販売側のAPI、ツールキット、サンドボックス、開発者向け文書を提供します。利用者やパートナーの要望をもとに、今後の開発内容を決める方針です。

x402が支払い要求とサービス提供をつなぐ

この仕組みの基盤となるx402は、HTTP通信にリクエスト単位の支払いを加えるオープン規格です。HTTPはウェブ上で情報をやり取りする通信方式で、x402では有料サービスが支払いを求める際に「402 Payment Required」という応答を使います。

利用者側がサービスを要求すると、提供側は価格、受取先、対応する決済方法を返します。エージェントは支払いに署名し、支払いの証明を添えてリクエストを再送します。提供側が決済を検証した後にサービスを実行し、決済の精算を経てリソースを返す流れです。

x402は単一の決済手段に限定されず、提供者が対応するネットワーク、資産、価格方式を選べます。固定額の請求に加え、上限額を認めて実際の使用分だけ精算する方式や、複数の支払いをまとめて精算する方式も定義されています。Mastercardはこの規格と自社ネットワークを組み合わせ、承認済みの範囲でエージェントが取引できるようにするとしています。

2社のサービスを使った試験例

MastercardがCloudflare Connectで示した試験では、マーケティング会社Hypeが、プロテインバーの発売キャンペーンを計画する作業と予算をエージェントに与えました。エージェントはAIsaでソーシャルメディアを調査し、Cloudflare AI Gatewayを通じてキャンペーン画像を作る2段階の計画を提示しました。Hypeが資金利用を承認した後、エージェントは各サービスを利用しました。

サービス側が支払いを要求すると、エージェントは上限内の支払いを約束する電子署名付きのバウチャーを作成し、販売側が検証して作業を続ける流れでした。実演ではAIsaの調査とCloudflareの画像8点を含む、2社への計9回の支払いが行われました。個別のアカウント、APIキー、請求書を使わず、エージェントが利用分を支払い、Hypeが予算を管理する構成です。

実演の裏側では、Coinbase Developer Platformがエージェントの資金用ウォレット基盤を、Baseがオンチェーン決済のネットワークを提供しました。BVNKはエージェントのウォレットとして機能し、Mastercard Global Money Platformを使って法定通貨またはステーブルコインで両側の決済と精算を扱いました。Mastercardは、同じモデルをAIモデル、データ、計算資源、APIなどのデジタルサービスに広げる想定です。