
MerckとModernaは、手術後のメラノーマ患者を対象とする個別化mRNAがんワクチンの第3相試験で主要評価項目を達成し、規制当局への申請準備を進めています。両社は肺がんや腎臓がんなどにも試験を広げています。他の腫瘍での有効性と、患者ごとのワクチンを製造・投与する仕組みが今後の焦点です。
第3相試験で再発と遠隔転移の評価項目を達成
薬剤はインティスメラン・オートジーン(V940、mRNA-4157)です。患者の腫瘍に固有の変異を基に設計する治療用ワクチンで、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(製品名キイトルーダ)と併用します。
第3相試験INTerpath-001では、腫瘍を切除したステージIIB〜IVの皮膚メラノーマ患者を対象に、併用療法とキイトルーダ単独を比較しました。併用群は、再発なし生存期間と遠隔転移なし生存期間の評価項目を達成し、両社は2026年8月に結果を発表しました。
再発なし生存期間は、無作為化から再発または死亡までの期間です。試験では全生存期間などの評価を続ける計画で、両社は規制当局と申請について協議する方針です。2026年10月時点で、両社は承認申請の準備を進めています。
患者の腫瘍変異からワクチンを設計
製造工程は、腫瘍と血液の採取から始まります。腫瘍組織からDNAとRNAを調べ、血液は患者のHLA型を調べるために使います。HLAは、免疫細胞が認識する目印となる断片の提示に関わる分子です。
遺伝子配列を解析し、腫瘍に特有の体細胞変異を洗い出します。選択アルゴリズムは患者のHLA型などを考慮して候補を絞り、免疫反応を引き起こす可能性のあるネオアンチゲン(腫瘍特有の新しい抗原)を最大34個選びます。
選んだ抗原の配列を一つのmRNAに組み込み、脂質ナノ粒子に包んで投与します。体内で抗原が作られて免疫系に提示されると、患者固有の腫瘍変異を認識するCD8陽性・CD4陽性T細胞の反応を誘導する設計です。その後の治療ではキイトルーダを併用し、両薬剤の組み合わせを評価します。
適応拡大では腫瘍ごとの組み合わせを検証
両社はメラノーマに加え、肺がん、腎細胞がん、膀胱がんなどで臨床試験を進めています。開発計画には、手術後の補助療法だけでなく、膵臓がんや胃がんの周術期試験、単剤療法の検討も含まれます。
キイトルーダの治療効果は腫瘍の種類によって異なります。Merckの研究開発責任者ディーン・リーは、同薬が作用する腫瘍や、効果が得られなかった腫瘍についての知見を、ワクチンを試す領域の選定に生かす考えを示しました。
リーとModernaのスティーブン・ホージは、キイトルーダが効きにくい腫瘍で別種の免疫療法が働いた場合や、早期腫瘍への単独投与なども検討対象として挙げました。リーは、転移腫瘍が別の治療で縮小した患者への使用も可能性として言及しています。膵臓がんと胃がんでは小規模な試験が進んでいます。
個別化製造と長期的な効果が次の焦点
腫瘍ごとに異なる配列を選び、個別の製剤を作るため、患者の検体採取から解析、製造、医療機関への配送までが治療の一部になります。工程では腫瘍組織の品質や量を確保し、配列解析に適した状態で検体を扱う必要があります。
選択アルゴリズムは候補となる変異を絞ります。MerckとModernaは、患者の免疫反応を解析してソフトウェアを改善する可能性も検討しています。Modernaのホージは、第3相プログラムの参加者から得られる情報を今後の分析に使う考えを述べました。











