
Metaの個人向けAIエージェント「Muse」などの普及を背景に、処理を実行するCPU(中央演算処理装置)の需要が拡大しています。 AMDとIntelの株価は直近1カ月でそれぞれ32%、21%上昇し、CPUとGPUの両分野で事業を伸ばすAMDの時価総額は1兆ドルに達しました。 AIモデルの計算に加え、エージェントがソフトウェアを動かし続けるための計算資源にも需要が広がっています。
Museは500万ダウンロードを突破、提供費用にも注目
AIエージェントは、AIモデルで作業を計画し、ツールを使って自律的に処理を進める仕組みです。 Metaは9月上旬にMuseを公開し、Museは2週間足らずでAppleのApp Storeの首位になりました。 Sensor Towerによると、公開後のダウンロード数は500万件を超えています。 OpenAIも個人向けAIエージェント「Dots」を投入しました。
Morgan Stanleyは、Museの利用者1人当たりの提供費用を月3〜130ドル、平均37ドルと推計しています。 この幅はAIモデルの推論の利用量によって変わるもので、同社はMuseがAMDの2026年の半導体売上高の20%に相当する可能性も見込んでいます。
ただし、Metaは特定のCPUに依存しない設計を採用していると説明しています。 OpenAIも複数のCPU供給元を利用しており、両社のエージェント向け需要がAMDだけに向かう構成ではありません。
GPUの推論とCPUの作業実行を組み合わせる
GPU(画像処理装置)は、AIモデルを動かして結果を得る「推論」に引き続き必要です。 一方、Futurum GroupのDaniel Newman最高経営責任者は、エージェントには数時間から数日間、バックグラウンドで作業できるコンピューターも必要だと説明しています。 GPUがモデルの計算を担い、CPUが実際の作業手順を実行するという役割分担です。
MetaとOpenAIは、1台のサーバーを複数のコンピューターとして使う仮想マシンを利用しています。 Museは利用者への応答でAMD搭載のコンピューターを使っていると説明し、DotsはAMDのサーバー向けCPU「EPYC」を搭載した仮想コンピューターで動くと回答しています。 ベンチマークとエージェント自身の回答では、Museの仮想コンピューターは2コア、Dotsは9コアを使用するとされています。
AMDのEPYCには最大192コアの製品があります。 Dotsが使用するとされるEPYC 9V74は再販業者から3,000ドル未満で購入でき、Museが使うとされるEPYC 9D25の二次流通価格はさらに低いとされています。 これに対し、NvidiaのGPUには単体でその10倍を超える価格のものがあります。
同時稼働数にはCPUの割り当てとメモリーが関わる
仮想環境のCPU数を読む際には、物理コアとvCPU(仮想CPU)の対応が重要です。Google CloudのCompute Engineでは、多くの構成で1つの物理コアが2つのハードウェアスレッドを実行し、それぞれを1 vCPUとして扱います。 一方、Arm系や一部のマシン系列では、1 vCPUが1つの物理コアに対応します。 これはCompute Engineでの定義であり、仮想CPUの数と物理コアの数を区別する例です。
エージェントを同時に動かす際の制約については、コーディング用AIエージェントを対象とした研究「AgentCgroup」が、メモリーの影響を測定しています。 Yusheng Zheng氏らは、Claude Codeと2種類のAIモデルを使い、144件のソフトウェア開発タスクを分析しました。 その実験では、同時実行数を制約する主な要因はCPUよりもメモリーでした。
ツールの実行やコンテナー、エージェントの初期化といったOS側の処理は、タスク全体の所要時間の55〜60%を占めました。 メモリー使用量はツール呼び出しに伴って急増し、ピークと平均の比率は15.4倍に達しています。 MuseやDotsの測定ではありませんが、ソフトウェアを実行するエージェントでは、CPU数に加えてツール実行時のメモリー需要も同時稼働に関わることを示す結果です。
x86とArmでは実行するソフトウェアの互換性が異なる
AMDのCPUは、既存ソフトウェアとの互換性を持つx86という命令体系を採用しています。 一方、大手クラウド事業者の多くは、Armの技術を基にした独自チップも開発しています。 エージェントが既存のプログラムを実行する場合、この命令体系の違いが実行環境に関わります。
Dockerのコンテナーは、アプリケーションと依存ソフトウェアをまとめる仕組みですが、内部で動くコードにはホスト側のCPU構成との互換性が必要です。 例えば、x86-64向けのLinuxコンテナーをArm64のホストで動かすには、エミュレーションが必要です。 CPU構成ごとの実行用データをまとめたマルチプラットフォームイメージなら、Dockerがホストに合うものを選択できます。
異なるCPU構成のコンテナーを動かす手段として、multiarchの「qemu-user-static」は、CPUの動作を再現するQEMUなどを利用しています。 同プロジェクトは、x86-64のホストでArm64のUbuntuコンテナーを実行する例を示しています。 ただし、Dockerはエミュレーションによるビルドについて、コンパイルや圧縮・展開など計算負荷の高い処理では、対応CPU上で直接実行する場合より大幅に遅くなることがあると説明しています。
AMDは2030年のCPU市場を2,200億ドルと予測
AMDの6月終了四半期のデータセンター事業売上高は前年同期の2倍超となる67億ドルで、全社売上高の約60%を占めました。 同社でコンピューティングと企業向けAIを担当するDan McNamara上級副社長は、エージェント用途を巡る議論が過去8〜10カ月で変わり、CPU販売が拡大するとの見通しを示しています。
市場予測も引き上げられています。Futurumは2027年のCPU売上高を1,180億ドルと予測し、5月時点の予測からほぼ倍増させました。 AMDは7月、2030年のCPU市場を2,200億ドルと予測し、2025年に示した600億ドルから上方修正しました。 同社は市場の半分超を獲得する見通しも示していますが、Mercury Researchが8月に示したAMDのx86 CPU出荷数量シェアは約46%です。
競合もエージェント向けCPUを投入しています。Armは3月に独自CPUを発表し、Metaを最初の顧客としました。 Nvidiaもエージェント向けに設計したCPU「Vera」とCPUのみを搭載するラックを投入し、2030年のCPU市場を2,000億ドルと見込んでいます。 みずほ証券のJordan Klein氏は、CPUとGPUの両方を供給できる企業が有利だと評価し、AMDを評価する一方でNvidiaの競争力も排除していません。









