
NASAはアルテミスIIで集めた月科学データ800GB超を公開しました。データには写真や映像のほか、乗組員の音声記録や手書きの注釈も含まれています。乗組員の観察記録を科学研究に利用できます。
800GB超のデータに写真・音声・注釈
NASAによると、公開したデータには月の写真と映像が1万1000点以上、月面の科学的観察を記録した音声が8.5時間分含まれます。NASAはデータを、惑星探査データを集める公開アーカイブ「Planetary Data System」にアップロードしました。
画像は乗組員が手持ちカメラやオリオン宇宙船のカメラで撮影したもので、乗組員が書き込んだ注釈画像も公開されています。NASAは写真・音声・乗組員のメモを組み合わせたデータを、研究者と一般の人々が利用できるようにしました。
NASAはデータとあわせて、予備的な月科学報告書、月科学活動報告書、データ利用ガイドの3文書も公開しました。文書には、ミッションの科学活動やデータの概要、科学計画の策定と実施方法をまとめています。
月面着陸ではなく、有人飛行の検証を担う
NASAによると、アルテミスIIの主目的は、乗組員を乗せて月周辺を飛行する試験です。ミッションの優先事項には、乗組員を飛行中から地球帰還まで支える能力や、将来の有人月探査に必要なシステムと運用の実証が含まれます。
アルテミスIIは月面に着陸せず、乗組員が月を周回するミッションです。アルテミス計画で初の有人飛行であり、NASAはオリオン宇宙船のシステム、乗組員の運用、将来のミッションに向けた手順を検証項目にしています。
NASAの優先事項には、飛行後の機体とデータの回収・評価も含まれます。通信、航法、推進、生命維持などのシステムを確認し、飛行中に集めたデータを今後のミッションに役立てる計画です。
乗組員の目視記録が科学データに加わる
アルテミスIIの乗組員は、月の裏側を通過した際に約7時間、交代で窓から月面を観察しました。最接近時には月面から4067マイルまで近づき、画像を撮影して観察内容を記録しました。
乗組員は月面に灰色や黒だけでなく、褐色、黄褐色、緑色、青色などの色合いを見つけました。NASAは、色の違いが岩石や鉱物の手がかりになり得るとしており、乗組員の観察と月周回機「ルナー・リコネサンス・オービター」のデータを比較する方法を挙げています。
観察記録には、月面の昼夜の境界付近の地形も含まれます。この境界は、太陽が地平線近くに見える月の南極の照明条件に似ています。NASAは乗組員の記録を、将来の月面探査での観察に関わる情報としています。
5回の衝突閃光を月の裏側で記録
乗組員は、岩石片が月面に衝突したときに生じる光の点滅「インパクトフラッシュ」を5回観測しました。観測時のオリオン宇宙船は月から約4万6000マイル離れており、NASAの科学チームは宇宙線や宇宙船の反射など別の原因を検討したうえで、目撃記録が衝突によるものと確認しました。
観測は、乗組員が月の裏側にいて通信が途絶える予定の時間帯に行われました。月の裏側を通過する際に約1時間続いた皆既日食が周囲を暗くし、微かな閃光を見つけやすくしました。
NASAは、閃光の明るさから衝突した岩石の幅をそれぞれ数インチ以下と推定しています。大気のない月では小天体が減速したり燃え尽きたりせず地表に衝突するため、こうした記録は月面で小規模な衝突がどの程度起きるかを調べる手がかりになります。
地上望遠鏡の観測と衝突頻度の推定
NASAの月面衝突監視では、月が約10〜50%照らされる夜に、暗い部分で閃光を探します。短時間の光を捉えるため、NASAは高感度カメラで毎秒30または25フレームの映像を記録するよう案内しています。
閃光に似た現象には、カメラ検出器に当たる宇宙線や電子ノイズ、人工衛星などからの反射光もあります。NASAは、別の観測者が同じ場所で同時刻に閃光を捉えたか照合する方法を案内しており、正確な時刻記録が判別に役立つと説明しています。
NASAマーシャル宇宙飛行センターの研究者らは、月面の閃光を使って衝突天体のエネルギーや質量を推定する手法を研究しました。2006年以降に300件を超える衝突を記録し、そのうち観測条件のよい126件を分析しています。こうした観測から衝突天体の質量や月面への飛来頻度を見積もる方法は、アルテミスIIの乗組員が記録した閃光の研究にも関係します。
NASAは、今回の人間による月科学データが、アルテミスIII以降の探査計画づくりにも役立っているとしています。写真や機器の測定値に乗組員の色の認識、口頭での説明、注釈を組み合わせ、月面の地質や観察条件を調べる材料にします。











