An engineering model of the DAVINCI descent probe
出典: science.nasa.gov

NASAはDAVINCIの打ち上げを2030年12月、VERITASの打ち上げを2032年11月に目指しています。大気を直接調べる探査機と、軌道上から地表を測る探査機が相次いで金星へ向かう計画です。予算の圧迫で遅れや中止が懸念されていた両計画は、打ち上げ時期を定めて開発を進めています。

Photo of a technician prepping the DAVINCI descent probe for a heat test
出典: science.nasa.gov

DAVINCIは大気を通過して地表を撮影

DAVINCIは金星の大気へ降下プローブを送り、ガスの組成を測定します。プローブは約1時間かけて地表へ降り、降下中のデータを母船経由で地球へ送る計画です。金星の地表は濃い雲に覆われているため、大気の測定と降下中の撮影を通じて、地表と大気の両方を調べます。

DAVINCIは希ガスや安定同位体の比率から、金星大気の起源と進化を探ります。希ガスの存在量と、アルゴン・窒素・硫黄・炭素の同位体を測り、大気の由来や大規模衝突が大気の変化に果たした役割を調べる計画です。水素同位体の精密測定は、金星が初期に海を持っていた場合に、その水をいつ、どの程度の速さで失ったかを絞り込む手掛かりになります。

観測機器の試験も進みました。NASAは2026年8月28日から9月10日まで、プローブの工学モデルを炉で加熱し、465度まで上げる試験を6回実施しました。機器を模した部品を100を超える温度センサーで監視し、モデルがすべての加熱サイクルを損傷なく通過したとしています。NASAはこの試験で、降下時の高温から内部の科学機器を守る設計を確かめました。

打ち上げ目標は従来計画から54週間前倒しされ、2030年12月となりました。2032年初めに金星を通過した後、降下プローブは同年10月3日に地表へ向かう予定です。母船はその後も飛行を続け、金星へ戻った際に軌道へ入るための燃料を残せる軌道を計画しています。

VERITASはレーダーで地形と変化を測定

VERITASは金星周回軌道からレーダーで地表を観測し、マゼラン探査機が1990年代に作成した地図を更新します。マゼランのレーダー画像は金星の約98%を約100メートルの解像度で撮影しましたが、NASAが公開する半球画像の実効解像度は約3キロメートルです。VERITASのレーダーVISARは、全球で30メートル、地表の約25%では15メートルの画像を作る計画です。

VISARは合成開口レーダーを使います。複数回のレーダー信号を組み合わせ、大きなアンテナに相当する感度を得る方式です。さらに、同じ場所を異なる時期に撮影した画像を干渉計測で重ね、地表のわずかな変化を捉えます。NASAはこの方法で、地球以外の惑星で初めて地表の活動的な変形を測る計画です。

地形図の作成に加え、VERITASは岩石の種類や鉄を含む鉱物の全球分布も調べます。赤外線分光計VEMは金星の雲を通過する近赤外線を捉え、地表の岩石や鉱物の組成を見分けます。火山から放出される水蒸気の推定や、地表を変えている地質活動の調査も計画されています。

NASAはVERITASの打ち上げを2032年11月に設定し、開発チームを増員して作業を加速しています。探査機は金星に2033年半ばごろ到着し、エアロブレーキングと呼ばれる大気抵抗を利用した減速を経て、定常的な観測に入る予定です。レーダー地図の更新と地表変化の観測を通じて、火山活動や地質の歴史を調べるためのデータを得ます。

予算変更を経て二つの計画が前進

金星探査計画は予算上の圧力を受け、VERITASは中止が検討されるほど開発が遅れました。NASAは欧州宇宙機関(ESA)の探査機EnVisionへレーダーを提供する協力からも離脱し、ESAは独自開発のレーダーで計画を進めています。NASAの惑星科学予算は引き続き圧迫されており、2026年度は議会が資金の大部分を復元しました。

NASAはEnVisionへの支援終了と火星サンプルリターン計画の中止で生じた資金を、DAVINCIとVERITASの開発に回しました。その結果、DAVINCIは打ち上げ目標を前倒しし、VERITASも新たな目標時期を得ています。VERITASの副主任科学者ダン・ヌネス氏は、探査計画を支えた科学者や支援団体に謝意を示しました。

NASAの2計画に加え、ESAのEnVisionも2032年の打ち上げを予定しています。民間資金による探査機では、Rocket Labが2027年後半にも金星の高高度の雲で有機物の兆候を探す計画です。金星では、地表の地図作成、大気の組成測定、雲の観測を異なる探査機が担います。