
NTTと宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、低軌道衛星を使った通信実験で、複数アンテナによる通信容量の向上と、地上のIoT端末から同時に届く信号の分離を確認しました。実験では従来の単一アンテナ方式に比べ、通信容量が最大約2.67倍になりました。地上の通信網が届きにくい場所でのIoT利用や、衛星観測データの伝送に向けた技術検証です。
3台のアンテナで通信容量が約2.67倍に
MIMO(複数の送受信アンテナを使い、複数の信号を伝送する技術)の実証では、低軌道衛星から複数の地上局へ、同じ周波数を使って異なる信号を送りました。地上局で受信した信号を集約し、同期や通信路の推定、信号の等化を行って分離します。
送受信アンテナを1台ずつ使うSISO方式と比較した結果、2台のアンテナと地上局2局を使う実験では、伝送容量が平均約1.94倍になりました。アンテナと地上局をそれぞれ3台にした実験では、平均約2.67倍でした。
実験装置「LEOMI」は、JAXAの革新的衛星技術実証4号機に搭載されました。同衛星は2025年12月14日に打ち上げられ、2026年3月に定常運用を開始しています。NTTとJAXAは、軌道上での通信路モデルを使ったシミュレーションと実測値の変動傾向も比較し、両者が一致することを確認しました。
地上の2地点から届く信号を衛星で分離
もう一つの実証では、地上の異なる2地点にあるIoT端末が、同一時刻・同一周波数で信号を送信しました。端末は920MHz帯のLPWA(低消費電力で広い範囲をカバーする無線通信方式)を使い、衛星上で受信した信号を分離して復調しました。
受信時には2端末の信号が重なっていましたが、信号処理によってそれぞれを取り出せました。これにより、離れた2地点の端末が同じ時間と周波数で衛星と通信できることを確認しています。
NTTが目指す衛星センシング技術は、小型で省電力のIoT端末を衛星で収容し、地上基地局がない場所からデータを集める構想です。インフラ設備の点検、環境モニタリング、スマートメーターなどへの利用が想定されています。
軌道の変化を踏まえた通信設計を検証
低軌道衛星と地上局の間では、衛星の移動に伴って通信路が時間とともに変化します。NTTとJAXAは、衛星の軌道をもとにしたシミュレーション値と実測値の傾向が一致することを確認し、伝送容量の変動を事前に推定できる可能性を示しました。
実験で用いたMIMOでは、複数の地上局が離れた場所に配置されます。受信地点ごとに信号の到着時間やドップラーシフトが異なるため、同じ周波数で届いた信号を分けるには、こうした差を考慮した処理が必要です。
軌道情報を使って衛星側のアンテナ数や地上局の配置を設計できれば、伝送容量を安定して高められるとNTTは見込んでいます。今回の結果は、複数のアンテナ構成で容量向上を確認した段階であり、NTTとJAXAは今後、異なる衛星通過条件や端末の送信条件でも実験を続ける計画です。
実用化に向けて約1年間の運用を継続
定常運用は2026年3月から約1年間続ける予定です。MIMOでは異なるアンテナ数や複数の衛星通過条件で試験を重ね、容量向上の効果を統計的に評価します。衛星センシングでは端末の送信条件や電波環境を変えて、技術を適用できる条件を調べます。
実用化には、実際にサービスを提供する衛星への搭載が必要です。NTTは現時点で具体的な実用化計画を定めておらず、低軌道衛星事業者との連携も必要になるとしています。
今回の研究成果は、2026年11月18日から25日まで開催される「NTT R&D FORUM 2026」で展示される予定です。軌道上での実験を続け、衛星MIMOとIoT端末の同時通信について、適用条件と効果をさらに評価します。











