
OpenAIはLinuxカーネルを自律的に調査し、一般ユーザーがroot権限を得られる948件のローカル権限昇格(LPE)エクスプロイトを生成したと発表しました。候補の検出から動的な再現、悪用可能性の評価、修正案の作成までを一連の工程で行いました。約121万ドル(約1億9,000万円)のAPIクレジットを使った検証では、発見後の確認やメンテナーへの報告も行いました。
2,308件の候補から948件のLPEを生成
2026年10月中旬の実行では、AIエージェントがLinuxカーネルのコードを静的に調べ、2,308件の脆弱性候補を抽出しました。候補のうち1,724件を隔離環境で動的に再現し、一般的なデスクトップLinux環境で948件のLPEエクスプロイトを生成しました。
同じ実行では、情報漏洩につながる脆弱性についても291件の実証コード(PoC)を作成しました。PoCは問題を再現するコードで、LPEエクスプロイトとは確認する影響が異なります。
研究者が生成されたエクスプロイトを166件抽出して分析した結果、少なくとも10種類の新しいLinux攻撃手法が使われていたとOpenAIは報告しています。
発見から修正案の作成までを自動化
パイプラインは、カーネル内のセキュリティ上重要な領域を特定し、コードを静的解析した後、候補ごとに検証プログラムを生成して隔離環境で実行します。再現できた問題について情報漏洩や権限昇格の可能性を調べ、修正案も作成します。
実行環境では、仮想マシン上のLinuxカーネルでKASAN(Kernel Address Sanitizer)を有効にし、候補を動的に検証しました。研究者が最終結果を確認し、報告や修正の判断に使います。
Linuxカーネルのセキュリティ報告では、影響するバージョン、問題の説明、再現手順や実行条件が重要です。再現可能な証拠は修正の検討に必要で、検証済みの修正案もメンテナーの作業に役立ちます。
API費用は約121万ドル(約1億9,000万円)
今回の実行に使ったAPIクレジットは1,213,430ドル(約1億9,000万円)で、LPEエクスプロイト1件あたり約1,279ドル(約20万円)でした。この金額は今回のモデル、対象環境、作業手順での費用です。
OpenAIは、過去にPwn2OwnとTyphoonPWNで提示された賞金額を948件に当てはめると、仮定上の総額は1,890万~6,630万ドル(約30億〜100億円)になると試算しています。賞金額との単純比較では、今回のAPI費用の約16~55倍に相当します。
新しいサイバーセキュリティ向けモデルを使った10月中旬の実行では、7月のGPT-5.6 Solによる調査に比べ、新たなLPEを5倍超発見したとOpenAIは報告しています。スキャンの間にはLinuxカーネルの強化や修正も進んでいました。同社は、より高性能なモデルで過去に調査したコードを再スキャンする考えを示しています。
メンテナーへの報告と修正を進める
OpenAIはLinuxカーネルのコミュニティの助言に沿い、深刻な脆弱性を優先して報告を始めました。研究者が生成した修正案と結果を確認し、Patch the Planetの参加組織とも協力して追加の報告やパッチ提出を進めています。
スキャンが進んでいた10日間に、ほかの貢献者によるLinux LPEの修正が100件超取り込まれるか、ステージングパッチとして用意され、約300件が公開の場で議論されていました。既に修正された問題の重複報告を避けるため、OpenAIは最新コードで再検証してから報告する方針を示しています。
Linuxカーネルのセキュリティ報告は、影響するサブシステムのメンテナーへ送り、Linuxカーネルのセキュリティチームを含める方法が案内されています。複数の箇所に影響する問題は、原則として個別に報告します。
報告でAIを使って発見した脆弱性は、Linuxカーネルの手順上、公開情報として扱う必要があります。再現コードを公に共有せず、利用可能であることを伝え、必要に応じてメンテナーから非公開で求められた際に提供する方法が案内されています。










