A SpaceX Dragon spacecraft approaches the International Space Station moments before docking to the Harmony module's space-facing port.
出典: nasa.gov

SpaceXのドラゴンが国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、人工網膜や心臓組織の研究装置、最後の新型太陽電池アレイを届けました。微小重力での製造実験機材とISSの電力供給を補う設備が、同じ便で運ばれています。

CRS-35がISSへ約2.86トン超の物資を輸送

ドラゴンは米東部時間10月15日午前10時27分、ISSの「ハーモニー」モジュールにドッキングしました。食料や乗組員向けの物資、科学機器など6,300ポンド(約130万円)超、約2.86トン超を運びました。

NASAとの契約に基づくSpaceXの商業補給ミッションとして、今回で35回目となりました。打ち上げは10月13日午前6時33分、フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地から行われました。

積荷には、微小重力下で人工網膜を製造する装置、3D心臓組織モデル、脳オルガノイドの実験機材、新しい種類のガラスの形成を調べる材料が含まれます。最後の国際宇宙ステーション・ロールアウト太陽電池アレイ(IROSA)も運ばれました。

微小重力で人工網膜の薄膜製造を調べる

人工網膜の研究では、光に反応するタンパク質を層状に重ねた薄膜を作り、損傷した視細胞の機能を補う技術を目指しています。LambdaVisionが開発する方式では、タンパク質バクテリオロドプシンを一層ずつ堆積させ、網膜下に挿入する薄膜を製造します。

地上では重力の影響で溶液が沈降したり、材料が凝集したりする可能性があります。LambdaVisionのニコール・ワグナー氏は、微小重力環境では層がより均一になり、欠陥が少なく、光学的透明度の高い薄膜を作れると期待しています。

地上のバイオプリンティングでは組織を支える足場が必要ですが、ISSの軌道上では組織が支えなしに立体的に成長します。人工網膜の製造でも、重力はタンパク質と結合材を重ねた膜の品質に影響します。微小重力下では、膜の安定性や光学的透明度の向上が期待されています。

心臓組織や脳の小型モデルも実験へ

3D心臓組織モデルは、人の心臓組織の重要な特徴を再現するためのものです。NASAは、こうしたモデルを将来の宇宙ミッションで多数の候補薬を試験する方法の開発に役立てる計画です。

バイオプリンティングは、生きた細胞やタンパク質、栄養素を材料にして組織を作る技術です。ISSでは心臓組織サンプルの印刷と処理を評価する研究が進められており、損傷した組織を補うパッチの開発や、将来的な移植用組織の製造につながる可能性があります。

脳オルガノイドは、細胞から育てた小さな立体状の脳組織モデルです。今回の実験では、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症などの神経疾患に関わる仕組みを調べ、治療標的の候補を探ります。

最後のIROSAでISSの発電を補強

今回届いたIROSAは、ISSに設置する新型アレイの最後のセットです。設置は2026年秋の後半に予定されています。

新型アレイは、既存の8つの電力系統のうち6系統を補うため、古いアレイの前面に配置されます。既存の太陽追尾や配電の仕組みを利用して、ISSの電力供給を増強する計画です。

各アレイは20キロワット超を発電し、6基の追加による増強分は最終的に最大約120キロワットとなる計画です。既存アレイなどの発電分を合わせると、ISSで利用できる電力は最大約215キロワットとなり、研究と運用に必要な発電能力を約20〜30%増やす見込みです。

ドラゴンは11月中旬までISSに滞在する予定です。その後、時間の制約がある研究試料などを積んで地球へ戻り、カリフォルニア沖の太平洋に着水する計画です。