SpaceXの株価は2026年10月5日に約8%上昇し、6月中旬以来の高値となる171.09ドルで取引を終えました。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の推定純資産も再び1兆ドルを超え、Forbesのリアルタイム億万長者ランキングでは1兆300億ドルとなりました。モルガン・スタンレーのアナリストは、AI事業の新製品、宇宙船Starshipの開発進展、計算資源を提供するクラウド事業の追加契約を、今後の株価に関わる材料として挙げています。
8月の安値から約58%上昇、次の焦点は試験飛行と決算
SpaceXは6月12日に株式を公開し、6月16日には終値で201.80ドルの最高値を記録しました。その後は下落傾向となり、8月上旬に底を付けてから、10月5日までに約58%上昇しています。今回の終値は6月中旬以来の高値ですが、上場直後の最高値は下回っています。
モルガン・スタンレーのアナリストは10月4日付の見解で買いを推奨し、目標株価を300ドルに設定しました。これは10月5日の終値から約75%高い水準です。同アナリストは、次回のStarship試験飛行と、10月下旬に予定される第3四半期決算に先立つ購入を提案しています。
株価上昇に先立つ週の後半には、SpaceXが同じ日に複数の打ち上げを実施しました。米航空宇宙局(NASA)の有人ミッションを国際宇宙ステーションへ送り、別の打ち上げではGoogleのAIチップを軌道へ運んでいます。
Starshipは上段とブースターの両方の再利用を目指す
StarshipはSpaceXの次世代宇宙船で、これまでに建造された中で最大のロケットです。宇宙へ向かう上段と、打ち上げを支えるブースターの双方を地球へ戻し、完全に再利用する設計を目指しています。衛星通信サービスStarlinkの衛星に加え、他の企業や機関の貨物や乗員を運ぶ用途が想定されています。
これまでの試験では上段が海上へ着水しており、上段の再利用はまだ実証されていません。モルガン・スタンレーのアナリストは、次回の試験で上段を捕捉する試みが行われれば、上場後の株価にとって大きな好材料になり得ると評価しています。
再利用の範囲は、SpaceXの既存ロケットFalcon 9と異なります。2017年3月30日のFalcon 9打ち上げでは、2016年4月に使用した第1段を再び飛行させ、打ち上げ後に同じ第1段を着陸させました。一方、当時のマスク氏は、Falcon 9の上段は当初から再利用を意図したものではなく、再利用を試す可能性があると述べていました。
マスク氏は2017年当時、Falcon 9の第1段が打ち上げ費用の最大70%を占め、第1段を次の飛行に向けて再給油する費用は20万〜30万ドルだと説明しています。Starshipは、Falcon 9で飛行実績のあった第1段だけでなく、上段も含めて機体を再利用する方式を目指しています。
AIモデルに加え、計算能力の貸し出しが収益を支える
SpaceXは前年にマスク氏のAI企業xAIを買収し、最近ではソフトウェア開発支援サービスのCursorも買収してAI事業を拡大しました。自社のAIモデルGrokを持つ一方、GoogleやAnthropicなどへ計算能力を貸し出すことでも収益を得ています。アナリストが挙げた「ネオクラウド」の追加契約は、この計算資源の提供事業に関わる材料です。
AI向けクラウドの具体例として、NeevCloudは機械学習に特化した基盤を提供し、モデルの学習、推論、デプロイ(利用環境への配置)を用途に挙げています。推論とは、学習済みのモデルを使って回答や予測を生成する処理です。NeevCloudも、SpaceXによる計算能力の貸し出しと同様に、AIを動かすための資源を顧客へ提供しています。
NeevCloudでは、並列計算を担うGPUの利用について、稼働時間に応じて支払う方式と、一定期間の利用を契約する予約方式を設けています。予約方式では、利用を続けるかどうかにかかわらず、契約期間分の料金を支払います。また、計算処理への課金と、推論におけるトークン単位の課金を区別しています。トークンは、モデルが扱う文章を分割した単位です。
SpaceXの計算能力の貸し出しによる収益は、Grok自体の普及状況とは別に、他社へ計算能力を提供する事業から生じています。
純資産1兆ドル台は保有株式を含む評価額
Forbesによるマスク氏の推定純資産1兆300億ドルには、TeslaとSpaceXの保有分が含まれています。Forbesの純資産推計の仕組みを解説するCrises Notesによると、上場企業の持ち分は株価と保有割合を基礎に評価され、非上場資産などには第三者の評価や推計も使われます。今回の1兆ドル台という数字は保有資産の評価額を含む純資産の推計であり、同額の現金を保有していることを意味しません。
SpaceXは米政府との取引からも収益を得ています。政府契約を追跡するFedScoutの集計では、米国防総省との取引による収入は累計127億ドルを超えています。国防総省は前週の水曜日、将来の戦争で必要となる兵器や技術、軍事能力を検討する「Project Meridian」の共同責任者にマスク氏を任命しました。
マスク氏は週末に、SpaceXのAI部門の名称を「SpaceXAI」から「SpaceXSI」へ変更する意向も示しました。名称変更は、ドナルド・トランプ大統領の新たな呼称を取り入れるものだとしています。









