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写真: Max Musterman / CC0 / Wikimedia Commons

スウェーデン国防研究機関FOIの研究者が、Wi-Fiの電波の変化から隠し持った拳銃を検出するAI「WiFireNet」を開発しました。複数人が動く室内での実験では検出精度が平均72.5%でしたが、拳銃の位置まで特定する条件では53.8%に下がり、実用化に向けた課題も残ります。

Wi-Fiの信号から拳銃を判別

WiFireNetは、送信機と受信機の間を通るWi-Fi信号が物体によって変化する性質を利用します。受信した信号から得られる「チャネル状態情報(CSI)」をAIが分析し、拳銃に対応するパターンを見分けます。

FOIの研究者は、人物の映像と、その人物が持つ物体によるWi-Fi信号の変化を同時に記録した「WiFire」データセットを作成しました。映像を教師信号として使い、拳銃と信号の特徴を対応づける深層学習モデルを訓練しています。

訓練データには、金属製の実物拳銃のほか、形が似たプラスチック製拳銃、金属製の水筒、携帯電話が含まれます。形や素材が似た日用品も加えることで、モデルが拳銃とほかの物体を区別できるようにしています。

動く複数人を対象にした実験

実験では、最大4人が12平方メートルの室内を移動し、そのうち1人が衣服の下に拳銃を携帯する状況などを扱いました。人が同時に動く環境で、隠された拳銃の検出と携帯者の位置特定を評価しています。

拳銃の有無を検出する精度は平均72.5%でした。さらに、携帯者の体のどこに拳銃があるかまで特定する厳しい条件では、精度は53.8%となりました。

現行の試作機は、IEEE 802.11aを改変した方式を使って検証されています。研究者らは今後、より高い解像度のCSIを得られるWi-Fi 7やWi-Fi 8を使う計画を示しています。

カメラや金属探知機との違い

Wi-Fi方式は、衣服などに隠れた物体を電波の変化から検出する仕組みです。カメラは遮蔽された脅威を捉えにくく、一般的な金属探知機は金属の種類を区別できないという制約があり、FOIの研究者らはWi-Fi方式を既存の監視手段を補う方法として提案しています。

空港などで使われるミリ波ボディスキャナーは、衣服を通った電波の反射を測り、衣服の下にある金属・非金属の物体を画像化します。利用者は装置の中で静止し、アンテナが体の周囲を回転する方式です。

これに対し、WiFireNetの実験では、複数人が動く室内での検出を扱いました。FOIの研究者らは、Wi-Fiが広く普及していることから、狭い検査場所に人を通す方式とは異なる補完手段になり得るとしています。

部屋が変わると精度が課題に

WiFireNetは、未検証の室内レイアウトでは精度が落ちると報告されています。電波の反射は部屋の形や物の配置に左右されるため、実験した環境以外で同じ性能が得られるとは限りません。

Wi-Fiセンシング全般でも、部屋、機器、利用者が変わるとモデルの性能が下がる「ドメインシフト」が課題です。14種類のデータセット、4種類のWi-Fi機器、2.4・5・6GHz帯を用いた研究では、事前学習データを増やすことで、未知の環境における複数のセンシング課題の精度が改善しました。

同研究では、データ量を増やすほど未知環境での精度が向上する一方、現時点のデータ量ではモデルを大型化しても改善は小さいと報告されています。対象は人物の行動・ジェスチャー認識と利用者識別であり、拳銃検出で同じ改善が得られることを示した結果ではありません。

FOIの研究者らは、WiFireのデータセット、モデル、コードを公開し、追加研究に利用できるようにしました。