
ヨルダン渓谷のウベイディヤ遺跡は、少なくとも190万年前にさかのぼることが新たな年代測定で分かりました。従来の推定より古く、ジョージアのドマニシ遺跡とほぼ同じ時期に人類がアフリカ外で活動していたことを示しています。
3つの手法が示した190万年以上前の年代
研究チームは遺跡の堆積物から新たな試料を採取し、互いに異なる3つの手法で年代を調べました。宇宙線によって岩石に生じる同位体を測る埋没年代測定、堆積物に残る古地磁気の記録、淡水性巻貝の化石を使うウラン・鉛年代測定です。
古地磁気は、堆積物ができた当時の地球磁場の向きを記録しています。研究チームはその向きを既知の磁場反転と照合し、堆積物が約250万年以上前に始まったマツヤマ期に形成されたと判断しました。
巻貝の化石の測定は、石器を含む地層の最低年代を定める手掛かりになりました。3つの手法を組み合わせた結果、ウベイディヤの年代は少なくとも190万年前とされ、以前の推定である120万〜160万年前を大きくさかのぼりました。
ドマニシと並ぶ初期の活動地点
ウベイディヤの年代は、ジョージアのドマニシ遺跡とおおむね同じです。両遺跡は、アフリカ外で確認されている初期人類の活動地点の中でも特に古いものです。
ウベイディヤではアシュール石器の伝統に属する石器が見つかっています。アシュール石器は、両面を加工した大型の道具が特徴で、ハンドアックスが代表例です。
一方、オルドワン石器は石の核から剥がした鋭い破片を使う道具で、核の一部を欠いて刃を作るチョッパーも含みます。破片は植物を切ったり、動物を解体したりする用途があったとされています。アシュールのハンドアックスは、石の両面を加工した涙滴形などの道具で、解体や皮はぎ、土を掘ること、木や植物を切ることに使われました。
石器の作り方にも違い
オルドワン石器の製作では、川の小石などの石核を別の石で打ち、鋭い剥片を取り出します。剥片が主な道具となり、石核は加工対象として残ります。
アシュール石器では、剥片を取り出すだけでなく、石核そのものを意図した形に整えます。ハンドアックスを作る場合は、剥片を計画的に取り除いて輪郭を作ります。
この違いは、完成した道具の形だけでなく、打ち欠く順序にも表れます。オルドワンでは剥片を刃として使うのに対し、アシュールでは剥片を取り除きながら石核を道具に仕上げ、製作時に出た剥片も切削具として利用しました。
堆積物の再移動が年代測定を複雑に
宇宙線由来の同位体を最初に測定した際、一部の岩石は約300万年前という値を示しました。しかし、古地磁気や化石、地質・考古学的証拠から想定される遺跡の年代とは一致しませんでした。
研究チームは、堆積物が死海地溝帯や周辺で、堆積、埋没、再露出、移動を繰り返した履歴を考慮しました。一部の物質は、遺跡の考古学的な地層に取り込まれる前に、別の場所で長期間埋没していたとされます。
そのため、岩石の同位体記録は遺跡の地層そのものより古い地質履歴を反映していました。堆積物の再移動を考慮することで異なる測定値の食い違いを説明でき、ウベイディヤの年代を少なくとも190万年前とする結論につながりました。
異なる石器伝統の広がり
ウベイディヤとドマニシの年代が近いことから、初期人類の集団が複数の地域へほぼ同じ時期に広がった可能性があります。研究結果は、アフリカ外への移動に、異なる石器伝統を持つ集団が関わった可能性を示しています。
ウベイディヤに結び付くアシュール石器と、ドマニシで見つかるオルドワン石器は、形や製作方法の異なる伝統です。オルドワンでは剥片を刃として取り出し、アシュールでは石核をハンドアックスなどの形に加工します。
研究チームは、年代と石器の違いを初期人類の移動を考える手掛かりとして、異なる道具作りの伝統が重なる時期にアフリカ外へ広がった可能性を提示しました。











