IPhone disassembled
写真: Yutaka Tsutano / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons

ジャレッド・クシュナー氏が使っていたiPhone Xにオランダ軍情報・保安局(MIVD)がアクセスし、画面を監視していたとする調査内容が公表されました。監視中、アラブ首長国連邦(UAE)などから計少なくとも20億ドル(約3,100億円)が移されたとされる銀行口座へのログインも記録されたといいます。クシュナー氏側は疑惑を全面否定しています。

GRUのサーバーから見つかったiPhoneの画面画像

2017年後半、MIVDは英国の協力を得て、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)のために活動していたロシア人ハッカーを拘束し、協力者にしたとされています。その人物から得たGRUのサーバーには、クシュナー氏のiPhoneの画面を撮影した画像が保存されていました。

MIVDの技術者は画像を手掛かりに侵入方法を調べ、2018年初めまでにiPhoneへのアクセス手段を見つけたとされます。侵入で把握できたのは、端末を使う際の画面表示でした。マイクやカメラを作動させたり、ファイルを取得・追加したりする機能はなかったと説明されています。

監視対象は、当時の最新モデルだったiPhone Xです。MIVDは画面の画像を継続して記録し、クシュナー氏がUAEの銀行口座にログインする様子を把握したとされています。

2つの口座に移されたとされる資金

「アルファ」と呼ばれた口座は、UAE最大の銀行であるファースト・アブダビ銀行に置かれていました。2017年からサウジアラビアとUAEが約7億5,000万ドル(約1,200億円)を移し、クシュナー氏とUAEの指導者ムハンマド・ビン・ザーイド氏が一部を管理したとされています。

資金はアゼルバイジャンの銀行を経由し、米ドルで送金されていたとされます。コール氏の調査で取材対象者が説明した仕組みでは、アゼルバイジャンの銀行は顧客が送った通貨と同額相当の米ドルを別の口座から送金する仲介役となり、取引額の約6〜7%を手数料として受け取る場合があるといいます。

もう一つの「ベータ」口座には、UAEから約10億ドル(約1,600億円)が移されたと報じられました。イスラエル中央銀行に置かれたこの口座について、ある情報提供者はクシュナー氏個人の利益のための資金と評しました。資金を動かす際、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に事前通知していたとも伝えられています。

資金の目的をめぐる疑惑と否定

アルファ口座は、外交上の目的に使う「共同資金」として運用された疑いがあります。クシュナー氏がUAE側の政策をトランプ大統領に働きかける見返りに資金を受け取った可能性や、イスラエルとパレスチナの紛争をめぐる交渉に資金が使われた可能性が報じられています。

当初、UAEとサウジアラビアの指導者は、トランプ氏が掲げた米国とメキシコの国境壁などに充てる100億ドル(約1兆6,000億円)超の外交政策基金を検討していたとされます。この構想は実現せず、代わりに少なくとも20億ドル(約3,100億円)が、クシュナー氏の利用を想定した少なくとも2つの口座に移されたと報じられました。

クシュナー氏の弁護士は、イスラエルの口座を知らず、口座は存在しないと否定しました。また、外国の指導者との合意は米大統領の承認を得ていたとも主張しています。クシュナー氏本人も疑惑を「完全にばかげている」と否定し、デービッド・フリードマン元駐イスラエル米大使も関与を否定しました。

オランダが公表した別のGRU関連作戦

オランダ政府は2018年、化学兵器禁止機関(OPCW)を標的としたロシアのサイバー作戦を阻止したと公表しました。オランダ当局は、GRUのサイバー部門に属するとする4人が機関の無線ネットワークへの侵入を計画し、英国の当局者も阻止に協力したと説明しました。

この作戦では、容疑者らがOPCW近くに機材を設置し、ログイン情報を傍受しようとしていたとされます。オランダ当局は4月13日に4人を拘束し、逮捕ではなくモスクワへの退去処分にしたと発表しました。

OPCWを狙った作戦とクシュナー氏の端末へのアクセスは別の事案ですが、いずれもオランダの情報機関がGRUに関係するサイバー活動を追っていた時期に起きました。