ClimateCropは、植物が葉に蓄えるデンプンを増やす遺伝子改変技術を開発し、バナナ、ジャガイモ、トマトなどで効果を調べています。葉に蓄えたデンプンは、夜間やストレス時に糖へ戻され、植物のエネルギー源になります。同社は蓄積量を増やし、生育やストレスからの回復を支えて収量向上につなげることを目指しています。
光合成で作られた糖を葉に蓄える仕組み
植物は光合成で糖を作り、その一部を一時的に葉のデンプンとして蓄えます。暗い時間帯や乾燥などで光合成が制約されると、蓄えたデンプンを糖に戻し、成長や生理機能に必要なエネルギーを得ます。この蓄積と利用のサイクルは日ごとに繰り返されます。
イスラエルのワイツマン科学研究所の研究チームは、植物のデンプン蓄積を調節するタンパク質群を発見しました。そのうち一つは、光が弱まる時間帯にデンプンの生産を抑える働きを持ちます。ClimateCropはこの調節機構に着目し、抑制につながる指令を弱めて、日々のデンプン蓄積を増やす方法を開発しています。
ClimateCropの共同創業者兼CEO、イェフダ・ボレンスタイン氏は、同社の試験でデンプン量が10〜15%増えたと述べています。バナナでは追加のデンプンが確認され、ジャガイモとトマトでも同様の結果が得られたとしています。ナタネとソルガムでも似た効果を確認した一方、効果の大きさは作物によって異なる可能性があり、C4植物ではC3植物より小さいと見込んでいます。
収量への効果は栽培条件ごとの検証が必要
蓄積したエネルギーが増えれば、根の成長やストレス後の回復を支える可能性があります。ただし、収量は土地や地域、季節、栽培条件にも左右されるため、ボレンスタイン氏は短期間の試験だけでなく、長期にわたる検証が必要だと述べています。収量の増加幅を一律に示さず、作物や環境ごとに評価する考えです。
炭素の蓄積先と成長の関係は、作物の状態によって変わります。バナナの研究では、干ばつ時に母株から吸収器官への炭素配分が減る傾向があり、干ばつと吸収器官の存在が重なると、貯蔵器官への投資も減りました。葉のデンプンを増やす改変の結果を考える際にも、植物内の炭素配分を作物や環境に応じて見る必要があります。
トウモロコシの圃場試験では、倒伏を抑える薬剤処理によって茎の非構造性炭水化物が減り、低い栽植密度では収量も低下しました。この試験はClimateCropの改変を調べたものではありませんが、炭水化物の量や利用可能性が収量に関わる事例です。デンプンの増加だけで収量への効果が決まるわけではなく、作物の成長段階や栽培条件を踏まえた評価が必要です。
遺伝子編集と育種期間の違い
ClimateCropは、対象となる遺伝子を編集するほか、自然に生じた変異を選ぶ方法も使っています。ボレンスタイン氏によると、同社は大規模な変異ライブラリーにアクセスできる企業と協力し、一部の作物で自然に生じた変異を見つけました。遺伝子編集の方法は作物ごとに異なるため、編集作業も各作物に詳しいパートナーと進める方針です。
従来の交配では、目的の形質を持つ系統を優良品種と交配し、その後、複数回の戻し交配を行って品種の性質を整えることがあります。単一または少数の遺伝子が関わる形質を優良品種へ直接導入できれば、戻し交配にかかる時間や資源を減らし、供与親由来の不要な遺伝子が残ることによる収量低下も避けられると、育種に関する論考は説明しています。
育種に関する論考では、遺伝子編集した植物を優良系統へ直接導入する場合、従来の選抜育種で必要な5〜6世代に対し、2〜3世代で商業化に進める例を挙げています。また、業界関係者から得た情報では、同じ形質の品種改良で市場投入までの期間を約3分の2短縮できたとの見積もりもあります。これは育種全般に当てはまる保証ではなく、編集した形質を優良品種に直接導入できる場合の比較です。
パートナーとの試験・商用化を進める
ClimateCropは2021年に設立され、ワイツマン科学研究所から技術のライセンスを受けました。研究を率いたアヴィハイ・ダノン教授は2021年に亡くなっています。創業者のボレンスタイン氏、エレズ・エリヤフ氏、ヴィヴェカナンド・ティワリ氏は、研究成果を複数作物へ展開するために会社を立ち上げました。
同社は育種会社や種子会社、生産者と協力し、技術を各社の品種へ取り入れる方法を探っています。ボレンスタイン氏によると、作物ごとに遺伝子編集の手順が異なるため、パートナーとの開発を優先しています。交配に使う変異の提供やライセンスなど、顧客に応じて協業の形を調整しています。
改変対象には、バナナ、ダイズ、黄エンドウ、ソラマメ、デュラム小麦、ヒヨコマメなどが含まれます。同社は企業と組み、各社の品種への導入と圃場試験に進む段階だと説明しています。









