
運動後の回復法として研究されているケトン体と光照射では、期待された効果が確認されませんでした。冷水浴の結果は評価指標によって異なり、筋肉痛を和らげる一方、筋力トレーニングの適応を弱める可能性も報告されています。
ケトン体で回復や睡眠は改善せず
ベルギーの研究グループは、自転車選手18人を対象に、8日間のステージレースを模した試験を行いました。各ステージ後と就寝前にケトン体またはプラセボを摂取してもらい、疲労からの回復、睡眠、身体機能や認知機能への影響を調べました。
選手は試験が進むにつれて疲労し、速度も落ちましたが、ケトン体群とプラセボ群に差はありませんでした。研究者が期待した回復の促進や睡眠の改善も確認されませんでした。
ケトン体は、運動中のエネルギー源を変えたり、筋グリコーゲンの消費を抑えたりする可能性が考えられてきました。人を対象にした先行研究をまとめた論考では、急性摂取が運動成績、認知機能、運動後の筋回復に与える効果を裏付ける証拠は不足しているとされています。長期摂取の研究は限られ、急性摂取では胃腸症状が起きる可能性も指摘されています。
光照射で筋肉のミトコンドリアに変化なし
低出力レーザー療法や赤色光療法とも呼ばれる光生体調節は、赤色光や赤外線を細胞に当てる方法です。筋肉のミトコンドリア機能を高めるという仕組みが主張されてきましたが、人を対象に検証されていませんでした。
マーストリヒト大学の研究グループは、12人の片脚に光を照射し、もう片脚には照射を伴わないプラセボ処置を行いました。各脚に5分間の処置を3回実施し、30分後に筋肉と皮膚のサンプルを調べました。
脚の間でミトコンドリア機能や筋代謝に関わる遺伝子発現に差はなく、確認された違いは皮膚表面のわずかな温度上昇でした。
冷水浴と温浴はサッカー後の測定値に差なし
フランスの研究グループは22人に模擬サッカー試合を行ってもらい、その直後、翌日、翌々日に、冷水浴または温浴を25分間実施しました。水温は冷水浴が約14度、温浴が約42度で、筋肉痛、筋疲労、神経筋機能を比較しました。
この試験では、冷水浴と温浴のグループ間で測定値に差はありませんでした。
運動後の冷水浴を受動的な休息などと比べた15件の系統的レビューの統合では、筋肉痛の軽減が最大96時間まで報告されました。高強度運動後24時間や、筋肉を伸ばしながら力を出す運動後24〜48時間には筋パワーの改善が、24〜48時間にはジャンプ成績の改善が報告されています。一方、運動直後にはジャンプ成績が低下し、筋力の成績は改善しませんでした。
筋力トレーニングでは長期的な影響にも注意
冷水浴の短期的な回復効果を扱ったレビューでは、筋力や筋肉痛の回復が早まった研究がある一方、影響が見られなかった研究もあり、結果は一貫していません。冷水による血管収縮や水圧が血流や代謝活動などに影響する仕組みが提案されていますが、効果の説明は確定していません。
15件のレビューをまとめた分析では、運動後の冷水浴を繰り返すと、筋力や筋肥大の伸びが抑えられる可能性が示されました。2021年のレビューも、筋力トレーニングでは筋肥大、筋力、パワーの適応が弱まる可能性を挙げています。一方、持久系トレーニングの適応には悪影響が見られないとする研究もまとめられています。









