
旧本部を建築・芸術の文化拠点に
ザハ・ハディド財団は、建築家ザハ・ハディドが30年以上にわたり設計事務所を構えていたロンドンの建物を改修し、2026年11月3日に一般公開します。ギャラリーや講演ホール、学習施設、所蔵品の展示スペースを設け、建築やデザイン、芸術に関する展覧会や催しを開く拠点とします。
建物はロンドンのクラーケンウェル地区、10 Bowling Green Laneにあるビクトリア朝時代の旧校舎です。財団は一般公開に先立ち、10月29日にプレビューを予定しています。
公開時には、展覧会に加えて講演やツアー、ワークショップを開催し、Architectural Associationの書店のポップアップも設けます。旧事務所は、作品展示に加えて学びや交流の場として活用されます。
旧校舎とハディドの改修の痕跡
改修を担ったStudio KAは、歴史的建築の再利用を手がけるロンドンの設計・研究事務所です。今回はグレードII指定の建物の地上階を中心に、動線を見直して空間を再構成しました。
改修では、もともとの暖炉や出入口を再び見せ、ハディドが事務所を使っていた時期に加えたZ字形のドア取っ手や、破片を思わせる床の意匠も残しました。新しい仕上げには、ハディドの絵画から採った色を取り入れています。

Studio KAは、既存建物の保持を重視し、技術的な方法や自然素材を用いて改修する方針を掲げています。改修後の室内には、ザハ・ハディド・デザインによる家具やオブジェも置かれます。
舞台デザインに表れた空間の試み
公開に合わせて始まる「Zaha Hadid: Architecture of Performance」は、財団が所蔵品をもとに企画する、ハディドの舞台・セットデザインを扱う初の展覧会です。ダンス、オペラ、ポップ音楽の舞台を通じて、建築で培った空間表現が別の分野でどう展開したかを紹介します。

財団の所蔵品には、1999年のPet Shop Boysのワールドツアーに向けた舞台模型があります。ハディドは、世界各地の異なる会場に対応できるよう、形を変えられるモジュール式の舞台空間を考案しました。模型に示された三つの連なる部分は、最終的に開閉や回転、収縮ができる連続した発光面へと展開されました。
その舞台装置は、床、台座、背景を組み合わせ、照明や映像投影とともに演奏空間を構成する設計でした。展覧会では、このツアーのほか、振付家ローズマリー・ブッチャーとの協働や、モーツァルトのオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」に関連する舞台デザインも取り上げます。
映像作品と年表も公開
第2ギャラリーでは、ロンドンを拠点とするアーティスト、LionHeartによる11分間の2チャンネル映像作品「The Rebar Beneath」を展示します。財団のアーカイブをもとに制作され、映像や詩、パフォーマンスを組み合わせています。

イラストレーターのモナ・チャラビは、ハディドの生涯と創作活動をたどる年表作品を制作しました。作品は財団の玄関ホールに設置され、ハディドがかつて着用したイッセイ ミヤケのコートを着想源とする布地に投影されます。
公開にあわせ、財団は新しいビジュアル・アイデンティティも導入します。アムステルダムのExperimental Jetsetが制作した書体システムは、ゆがむグリッドを使って文字や構成を変化させる設計です。新しいウェブサイトは10月12日の週に公開する予定です。

アーカイブを研究・教育や公開に活用
ザハ・ハディド財団は、2013年にハディドが設立した組織です。若い世代の建築・デザイン教育、所蔵アーカイブの保存と展覧会、恒久的な美術館またはギャラリーの設立支援を目的に掲げています。財団は現在、所蔵品の目録作成と展示を進めています。
財団の所蔵品の大半は、ロンドンのシャド・テムズにある旧デザイン・ミュージアムの建物に保管されています。一方、クラーケンウェルの旧事務所は、ギャラリーや教育スペースを備えた一般向けの建築拠点として整備されます。
財団はArchitectural AssociationとSerpentineと協力し、10月30日と31日にロンドンの各会場で2日間のシンポジウムを開催します。31日はハディドが生きていれば76歳の誕生日にあたります。












