シロシビンを摂取した人の脳活動を調べたところ、一見乱れているように見える変化の中に、休息や瞑想、音楽、映像といった状況に沿うパターンが見つかりました。研究チームは、このパターンが自己と外界の境界が薄れる感覚や、翌日の心理状態の変化とも関連したと報告しています。ただし、参加者は精神疾患の患者ではなく、結果は治療効果を示すものではありません。

MRI-Philips
写真: Jan Ainali / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons

62人が4つの状況で脳活動を測定

研究チームは、過去に幻覚剤を使ったことのない成人62人を対象に、シロシビン摂取前と摂取当日の脳活動を測定しました。参加者は安静、誘導瞑想、音楽の聴取、雲が動く映像の視聴を行い、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)と脳波計(EEG)で計測を受けました。

研究では、参加者に認知課題を課さず、自然な体験中の脳活動を捉える設計を採用しました。課題によって体験が中断されるのを避けるためです。fMRIは摂取から約80分後、EEGは約150分後に実施されました。

体験後、参加者の半数はセッションを人生で最も意味のある体験の一つに挙げ、24人は個人的な上位5つに入ると評価しました。研究チームは、脳活動の変化がどの状況で生じ、主観的な体験とどう結びつくかを分析しました。

感覚領域と連想領域のつながりが変化

目を閉じていた安静、瞑想、音楽の条件では、感覚に関わる領域が脳全体と結びつく度合いが低下し、連想に関わる領域では上昇しました。全体的機能結合性(GFC)は、脳の各領域がほかの領域とどの程度活動を同期させるかを表す指標です。

一方、映像を見るために目を開けた条件では、感覚領域と連想領域の双方でGFCが上昇しました。通常は目を閉じた状態と映像を見る状態で異なる視覚ネットワークの活動が、シロシビン摂取後には近づき、その差は85%縮小しました。EEGでも、視覚入力を調整する働きの目安となるアルファ帯域の活動がほぼ半減しました。

研究チームは、感覚処理と連想的な処理の境界が弱まることが、目を閉じた状態で複雑なイメージを見る体験や、自己と外界が一体に感じられる体験に関係する可能性を示しました。ただし、研究チームは、こうした脳活動と主観的体験の具体的な仕組みは未解明だとしています。

時間の平均化で見えなかった状況差

脳画像の一般的な分析では、計測時間中の活動を平均し、さらに複数の参加者のデータもまとめます。この方法では、短時間だけ現れる構造や、一人ひとりの体験の違いを捉えにくくなる可能性があります。

研究チームは、CEBRAという機械学習手法を用いて、脳の332領域の活動を時間ごとに分析しました。CEBRAは高次元の時系列データを低次元の空間に写し、データに含まれる構造を見つける手法です。行動や状況などの補助情報を脳活動と組み合わせて分析する使い方もあります。

今回の分析では、計測中の各時点を3次元空間上の点として表し、時間に沿った軌跡を参加者ごとに作りました。軌跡は安静、瞑想、音楽、映像に対応する4つのまとまりに分かれ、分類器は脳活動から参加者がどの状況にいたかを判別できました。状況を判別する精度は、参加者が体験をどれほど深いものと評価したか、また翌日の心理状態がどれほど変化したかと関連しました。

治療への応用には臨床研究が必要

研究チームは、環境や音楽、指示が脳活動の組織化に関わるなら、治療の場で調整できる要素になる可能性を挙げています。今回の参加者は健康な人で、精神疾患の患者を対象にした研究ではありません。また、同じ「自己と外界が一体に感じられる」尺度の得点でも、本人の体験は異なる場合があります。

成人の大うつ病性障害を対象にした別のシステマティックレビューとメタ分析では、10件の臨床試験が対象となり、そのうち8件が定量分析に含まれました。シロシビン補助療法は、短期的な抑うつ症状の軽減と関連し、統合効果量は1.15でした。ただし、被験者内比較の効果量は1.63、対照群を置いた被験者間比較では0.96と差がありました。

レビューでは、長期的な有効性の検証が不足し、エビデンスの確実性は低から中程度と評価されています。投与日の有害事象は一時的で管理可能とされ、重篤な有害事象のリスク増加は認められませんでしたが、試験の盲検化が保たれにくい点が主なバイアス上の懸念でした。研究チームは今後、音楽や映像などの条件を誰にどう調整するかを含め、臨床応用に向けた検討が必要だとしています。