2026年7月、豪州ビクトリア州沖で釣られた2匹の大型マグロが、遺伝子検査で太平洋クロマグロと確認されました。遊漁者が同州で太平洋クロマグロを確認したのは初めてです。外見のよく似たミナミマグロとの判別には遺伝子分析が役立ち、釣った人たちと研究者の連携が記録につながりました。
2匹の大型魚を遺伝子検査で判別
2匹は数日違いで、バス海峡のウエスタンポート湾沖、水深50〜60メートルの海域で釣られました。1匹は約165キログラム、全長2.12メートル、もう1匹は131.6キログラム、全長2.02メートルでした。
釣った人たちは当初、ビクトリア州の遊漁でよく狙われるミナミマグロと考えていました。しかし、体の模様や体形、臀びれと第2背びれの長さなどに気づき、魚種を再検討しました。太平洋クロマグロとミナミマグロは肉眼では似ており、外見だけでは判断が難しい場合があります。
釣り人のデーブ・スタンディング氏が筋肉のサンプル採取を調整し、ジョナ・イック氏を通じて、豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO)の遺伝学者ピーター・グリュー氏に届けました。CSIROの簡易DNA検査で2匹とも太平洋クロマグロと判定され、続く配列解析でも結果が確認されました。
遺伝子検査が魚種の確認を支える
マグロ属には複数の魚種があり、クロマグロ類は外見がよく似ています。2009年の研究では、ミトコンドリアDNAの制御領域を主に使う分析法で、マグロ属8種を識別できると報告されました。必要に応じて核DNAのITS1領域を追加し、判定を検証する方法も示されています。
同研究では、一般的なDNAバーコードに使われるCOI領域だけでは全種を識別できないことも報告されています。使うDNA領域によって識別結果が変わり得るため、魚種判定では適切なマーカーを選び、必要に応じて別の領域で確かめます。
別の研究では、太平洋・ミナミ・大西洋のクロマグロ類を対象に、ミトコンドリアDNAのシトクロムb遺伝子を分析しました。配列上の複数の位置に基づいて3種を区別できると報告しており、DNAを使った識別には複数の分析手法があります。
南半球での確認と回遊のつながり
太平洋クロマグロは北半球でより一般的ですが、ニュージーランドの遊漁でも漁獲されています。WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)によると、産卵場は主に北西太平洋にあり、幼魚の一部は東太平洋へ移動して餌をとります。多くは成長後に西へ戻って産卵します。
太平洋クロマグロの幼魚の多くは、最初の1年で日本南方の産卵場から太平洋を横断します。成魚は出生した海域に戻って産卵し、その後はカリフォルニア沖やニュージーランド沖などの餌場へ向かいます。太平洋クロマグロはニュージーランドの遊漁でも漁獲されており、南半球にも移動します。
今回のようにビクトリア州の遊漁者が釣った太平洋クロマグロが、遺伝子検査で確認されたのは初めてです。商業漁業の延縄では同州沖での漁獲が知られていましたが、漁場は通常、沖合の深い海域でした。今回の2匹は海岸から10キロ以内で釣られたと報じられています。
続く漁獲と資源管理の動き
数カ月後、ビクトリア州東部のレイクス・エントランス沖では、130〜217キログラムのマグロが多数釣られました。外見から太平洋クロマグロの可能性があると評価され、一部の魚からサンプルが集められ、CSIROが検査を進めています。最初の2匹とは異なり、これらの魚はまだ遺伝子検査で太平洋クロマグロと確認されていません。
WCPFCは太平洋クロマグロを、太平洋全体を一つの資源として管理しています。2024年の資源評価では、産卵親魚量が2010年ごろの歴史的な低水準から回復し、2022年には漁獲がなかった場合の23.2%と推定されました。漁獲管理では、若齢魚の漁獲を抑えることが回復の維持に重要とされています。
WCPFCの管理措置は中西部太平洋の漁業を対象に、漁獲量や魚の大きさなどの報告、若齢魚の漁獲削減、漁業と養殖の監視を定めています。レイクス・エントランス沖で検査中の魚が同種と判定されれば、州沿岸での確認記録がさらに増える可能性があります。










