ペットとの暮らしと生活満足度
英国の家計パネル調査を用いた研究で、ペットと暮らすことが生活満足度を高めるとの推計が示されました。研究チームは、ペットとの暮らしによる満足度の上昇を、1〜7の尺度で3〜4ポイントと推定しています。
同じ研究では、生活満足度への影響を金額に換算すると、ペットとの暮らしは年間最大7万ポンド相当と推定されました。これは生活満足度を基準にした評価で、研究チームは友人や親族と定期的に会うことについて先行研究が示した価値と同程度としています。
この推計を行ったのは、Michael W. Gmeiner氏とAdelina Gschwandtner氏です。ペットと人の健康や満足度には関連があるとする研究が蓄積する一方、飼育が満足度を高めたのか、満足度の高い人がペットを飼いやすいのかを区別する難しさがありました。
英国の調査データと推計方法
分析には、英国の家計を追跡する「Understanding Society」のイノベーション・パネルが使われました。ペットと性格に関する回答を得た2010年の調査と、後年の生活満足度などの回答を組み合わせています。生活満足度は「人生全体」への満足を1〜7で尋ねた回答から測定されました。
主な推計では、2,617件の観測と1,980世帯のデータが使われ、同じ人が複数回含まれる場合があります。操作変数法は、ペットとの暮らしと満足度の双方に関わる要因の影響を調整し、因果関係の推定を目指す統計手法です。
研究チームは、旅行中に近隣住民から家の見守りを頼まれる関係を、ペットとの関わりを推定する手がかりとして使いました。近隣住民との元々の関係なども考慮し、単純な相関だけに依存しない推計を試みています。
ペットと心の健康をめぐる研究の幅
犬や猫の飼育と心の健康を調べた2021年の系統的レビューは、54件の研究を対象にしました。そのうち41件は一時点の状態を調べる横断研究、11件は同じ人々を追跡する前向き縦断研究で、残る2件は別の研究デザインでした。
レビューでは、飼育の影響を肯定的と分類した研究が17件、肯定・否定の両方を含む研究が19件、影響なしが13件、否定的な影響が5件でした。対象者や方法の違いもあり、研究間の結果を直接比べることは難しいとされています。
このレビューの結果は、ペットの飼育が心の健康に一律の効果をもたらすという見方には結びつきません。英国の研究が推定した生活満足度への影響と、ほかの研究が扱った不安や抑うつなどの指標は、対象や測定方法が異なります。
生活満足度を金額に換算する考え方
生活満足度を使う経済評価では、市場価格のないものが満足度に与える変化を、所得が満足度に与える変化と比べて金額に置き換えます。Daniel Fujiwara氏の2013年の研究は、生活満足度などの主観的幸福度データから、非市場財と所得の限界代替率を推定する考え方を説明しています。
Fujiwara氏は、従来の単一方程式による推計には偏りが生じる問題があると指摘し、所得と非市場財を別々のモデルで推定する「三段階ウェルビーイング評価」を提案しました。この手法の説明では、失業の価値を例に推計しています。
所得と満足度の関係自体も、所得の測り方で変わり得ます。ニュージーランドの税記録と調査回答を個人単位で結びつけた研究では、所得を区分で尋ねる自己申告のほうが、雇用主の報告値より生活満足度との相関が強く、自己申告所得の係数は60%超大きい結果でした。
このため、ペットとの暮らしを年間7万ポンド相当とする推計は、所得と生活満足度の関係を使った評価方法に基づいています。ペットの市場価格や、個々の飼い主が実際に受け取る金額を表すものではなく、生活満足度の変化を金額に換算した研究上の推定値です。










