
80年余り海底に残る燃料を調査
ミクロネシアのチューク環礁に沈む旧日本船2隻の燃料から、42門・1,505種相当の細菌が確認されました。石油成分を分解する能力が知られる細菌群も含まれます。
調査対象は、タンカー「神国丸」と、軍務に転用された元旅客・貨物船「清澄丸」です。神国丸からは中質燃料油、清澄丸からはより重質な燃料油が漏れています。
チューク環礁は、第二次世界大戦中の1944年に米軍の空襲を受け、多数の沈没船が残る海域です。船体の腐食で開いた箇所から、タンク内に残った燃料が長期間にわたり流出しています。
燃料の種類で異なる成分と細菌群
燃料には、海洋生物に有害なものを含む複雑な炭化水素が含まれていました。神国丸の燃料は揮発しやすい芳香族化合物が多く、清澄丸の燃料は環境中に残りやすい炭化水素に富んでいました。
DNA解析では、細菌は42門、107綱、249目、432科、1,047属にまたがり、プロテオバクテリアが大きな割合を占めました。分類群には、石油由来の炭化水素を炭素源やエネルギー源として利用する種が知られるラルストニア属、スフィンゴモナス属、コリネバクテリウム属も含まれます。
神国丸では、油そのものと油・海水の境界から採取した試料で、細菌群の構成が異なりました。環境ごとに異なる細菌が生息することを示す結果ですが、炭化水素の代謝がその違いを生んだかどうかは、今後の検証が必要です。
DNAの検出と分解の確認は別の段階
海洋細菌によるアルカンの好気的な分解では、アルカンモノオキシゲナーゼなどの酵素がアルカンをアルコールへ酸化します。その後、複数の酵素によって脂肪酸へ変換され、ベータ酸化へ進みます。
北大西洋のフェロー・シェトランド海峡を対象にした研究では、炭素13で標識したアルカンを使うDNA安定同位体プロービングと、メタゲノム解析が組み合わされました。標識を取り込んだ微生物のDNAを調べることで、基質を利用した微生物群を捉えています。
同研究では、深度5メートルと700メートルの海水から、19属に属する42のメタゲノム再構築ゲノムが得られました。そのうち20にはアルカン酸化経路を構成する遺伝子がそろっていました。チューク環礁の調査では細菌の存在が確認されていますが、同位体標識の取り込みや燃料成分の減少は測定されていません。
栄養塩や環境条件も分解に関わる
海洋環境での炭化水素分解は、微生物群の構成だけでなく、酸素の有無や栄養塩、油の化学組成にも左右されます。研究例では、栄養塩が多い条件で一部の石油分解菌が増える一方、揮発性炭化水素が、酸素を使わない条件下での分解を妨げる場合も示されています。
国立環境研究所は、日本海沿岸と種子島で、油を混ぜた砂や小石に肥料を加える現場試験を行いました。試験は3〜4カ月続き、肥料を加えた区では、加えない区に比べて石油全体の除去量が増えました。
同試験では、硝酸やアンモニアより、尿素などの有機態窒素の方が分解促進効果が高い結果でした。石油除去量の試算では、微生物分解の寄与は肥料添加区で約2割、砂などから剥がれる物理的な除去は約4〜6割とされました。これらは海岸の小規模試験で得られた知見で、チューク環礁の船内燃料で同じ結果が得られたことを示すものではありません。










