健康なサンゴとの接触で共生藻が移る
高水温などで褐虫藻と呼ばれる共生藻を失ったサンゴが、健康なサンゴに触れて共生藻を受け取り、数週間で回復することが実験で確認されました。組織の融合でできる通路を通じて藻が移る仕組みは、白化後のサンゴを回復させる方法の研究につながる可能性があります。
スタンフォード大学の実験では、白化させたハナヤサイサンゴの小片を、同じ遺伝型を持つ健康なサンゴ片に接触させました。共生藻は接触部分から広がり、個体群の倍加時間は約4日でした。接触を1週間続けると、その後に健康な片から分離しても自力で回復できる量の藻が移りました。実験では、一部の条件で接触が3日でも移送が始まりました。
組織の融合によって、健康なサンゴから白化したサンゴへ藻が移ります。同じ遺伝型同士では融合が進みますが、異なる遺伝型の組み合わせでは対立反応が起こり、接触による回復には至りませんでした。一方、融合前にポリプが藻を取り込む経路は異なる遺伝型間でも見られましたが、それだけでは群体の回復に足りませんでした。
共生藻の種類が高水温への耐性に関わる
サンゴは体内の細胞に共生藻を宿し、藻が光合成で作る物質から栄養の大部分を得ています。熱ストレスで共生関係が崩れ、藻が失われると、サンゴは栄養不足などに陥ります。
共生藻の種類によって、サンゴの高水温への耐性は変わります。耐熱性のあるDurusdiniumなどを持つサンゴでは、熱への耐性が高まる場合がありますが、影響は環境や組み合わせによって異なります。黄岩島の18種を調べた研究では、耐熱性のあるC3u亜系統とDurusdiniumが共生藻群集の大半を占めました。また、菌類の多様性や病原性を確認された菌の多さは、白化率の高さと関連していました。
藻を移す方法では、どの種類の藻を移すかも回復研究の論点です。オーストラリアの実験では、耐熱性を持つよう培養した共生藻を持つサンゴ片を、白化した別の片に接触させました。融合後、2種のサンゴで接触部分の色素量と光化学効率が上がり、約50日後には一部で導入した藻が検出されました。
接触移送と既存の修復手法
サンゴ礁の修復では、小片を養殖場で育ててから移植する方法や、細かくしたサンゴ片を直接移植する方法が使われています。メキシコのイスラス・マリアスで行われた調査では、2種のサンゴの小片を岩礁に直接移植し、13カ月にわたり成長や生存を評価しました。
この移植実験では、ハリケーンの影響があったものの、成長指標は2倍を超えて増加し、生存率は約58〜61%でした。接触移送は移植後の成長ではなく、白化した個体へ共生藻を届ける過程を扱います。既存の移植手法を置き換える方法としては検証されていません。
世界の修復事例をまとめた調査では、報告された計画の多くは小規模で、修復区域の中央値は100平方メートルでした。調査対象の59%では成長の速い枝状サンゴが扱われ、生存率は60〜70%と報告されました。また、計画の60%は修復地のモニタリングが18カ月未満で、規模拡大には目標設定や標準化した評価が課題として挙げられています。
野外での適用に残る課題
実験で確認された接触移送を自然のサンゴ礁で広く実施するには課題があります。すべての群体に処置するのは現実的ではなく、元の共生藻を戻すだけでは次の熱波への耐性が高まらない可能性があります。
耐熱性のある共生藻を使う方法では、移送の効率や背景にある別経路との区別が課題です。オーストラリアの実験では、融合していない対照群でも同じ水中に置かれたサンゴから耐熱性の藻が検出され、融合を介した移送だけの効果とは切り分けられませんでした。検出された量も融合したサンゴ片で3.5%未満と低い水準でした。
スタンフォード大学の研究チームは、遺伝的に同一の提供元を必要とせず、より濃縮した共生藻を届ける方法を検討しています。接触による回復の速さと耐熱性のある藻を届ける方法を組み合わせられるかは、今後の研究課題です。










