Remote work - Ergonomia
写真: Claudia Carpinelli / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons

米ウォートン校の研究者らは、多国籍金融サービス企業の従業員約760人に聞き取りを行い、リモート勤務では同僚に相談し、助けを得るための関係が弱まり得ると報告しました。米Microsoftの6万1182人を対象とした研究でも、全社的な在宅勤務への移行後、協業ネットワークが固定化・分断され、情報共有の仕方も変わったとされています。

約760人への聞き取りで浮かんだ相談の滞り

ウォートン校の経営学教授ピーター・カペリ氏とテキサス大学オースティン校のコミュニケーション学教授Y・ジャスミン・ウー氏らは、2023年後半、米国、英国、インドの従業員を対象に38回のグループインタビューを実施しました。研究者らが「関係資本」と呼ぶのは、誰に相談すればよいかを知り、気兼ねなく尋ねられ、相手から助けてもらえる状態です。

従業員は、担当業務や主要業績評価指標(KPI)の達成を「仕事が進んでいる」と捉える一方、同僚の支援や新人への説明は後回しになりやすいと語りました。こうした助け合いは正式な職務要件より個人的なつながりに頼っており、研究者らは関係が弱まっていたと述べています。

社内連絡にMicrosoft Teamsを使っていても、メッセージを送ることと返事を得ることは別でした。顔見知りに電話した従業員は早く助けを得やすかった一方、入社間もない従業員の一人は、職場に友人がいない状態で回答を得るまで3カ月かかったと報告しています。返答の遅れが次の相談をためらわせ、関係をさらに弱める循環も指摘されました。

6万1182人の記録に表れたネットワークの変化

Nature Human Behaviourに掲載された研究は、2020年上半期の米国Microsoft従業員6万1182人について、メール、予定表、インスタントメッセージ、音声・ビデオ通話、労働時間のデータを分析しました。パンデミック前から在宅勤務をしていた従業員との比較により、全社的な在宅勤務への移行の影響を推定しています。

研究チームは、在宅勤務への移行後、組織内の異なる部門や集団をつなぐ協業ネットワークの結びつきが減り、残った橋渡し役との協業時間も短くなったと報告しました。従業員は、比較的つながりの強い同僚と過ごす協業時間の割合を増やし、弱いつながりの相手と過ごす割合を減らしていました。

また、月ごとに新しい協業関係を作ったり解消したりする動きが少なくなり、ネットワークはより固定的で、集団ごとに分かれた状態になりました。会議や通話など同期的なやりとりは減り、メールやインスタントメッセージなど非同期の連絡は増えています。研究チームは、こうした変化により、組織内で新しい情報を得たり共有したりすることが難しくなる可能性があると述べています。

出社日と新人支援を仕事の仕組みに組み込む

ウォートン校の研究者らは、チームのメンバーが同じ日に出社できるよう調整し、その日に共同活動を設けることを提案しました。新入社員には、直属のチーム外の人も紹介する、より体系的な導入が必要だとしています。同社では出社日の運用が一貫せず、共有デスクもあったため、通勤しても同僚と会えるとは限りませんでした。

Microsoftの新入社員調査を紹介する数値では、上司が積極的に関与した新入社員は、オンボーディングに満足したと答える割合が3.5倍で、チームの成功に貢献できたと感じる割合が1.2倍でした。また、最初の90日間にバディと少なくとも1回会った人の56%が、その面会によって早く仕事を進められるようになったと回答し、8回を超えて会った人では97%でした。いずれも関連を示す数値で、面会回数だけが結果を生んだと証明するものではありません。

バディ制度に関する別の調査まとめでは、最初の90日間にバディと1回会ったリモート勤務の新人は、5カ月時点でバディがいなかった新人より満足度が31%高かったとされています。同じまとめは、5回以上会った新人の満足度が97%高かったことや、バディを割り当てた新人の生産性到達が23%速かったという報告も紹介しています。これらは異なる成果指標についての報告であり、バディとの面会だけで成果が決まることを示すものではありません。

助け合いを評価と職務に位置づける

ウォートン校の研究者らは、同僚への支援や新人の指導を善意に任せず、職務記述や評価基準に含めるよう提案しました。昇進の判断でも、個人のKPIだけでなく、同僚を助ける仕事を考慮すべきだとしています。これは、個人の成果を優先する運用の下で助け合いが後回しになったという聞き取り結果を受けた提案です。

同社の従業員には在宅勤務を好む人も多く、回答者の一部は、対面での接触が少ないことを女性やマイノリティ、内向的な人にとって利点と捉えていました。自宅に集中できる場所があれば、仕事に集中しやすいという声もありました。研究者らは、聞き取りだけでは在宅勤務が問題を引き起こしたと証明できず、問題の広がりも確定できないと認めています。

パンデミック期に個人の健康を優先する規範が広がったことも、助け合いの変化に関わった可能性があると研究者らは述べています。調査対象の企業で見つかった課題を、すべての職場やリモート勤務の因果的な影響として扱うことはできません。